オーダーはストレート


初めて会った印象


小さくて
弱そうで
とても頼りなさそうな
只の少年


でも、彼とどこかで会っていた気がした


あぁ、そうだ

昔の俺だ


弟分だからとかじゃなくて
それ以上に


彼の支えになりたいと思った


助けたいと思った




『これを、沢田綱吉に渡してほしい』

やけに重い箱を持たされたと思った

俺の必要性は只渡すだけで

中には俺の物は無くて

これを渡すことは彼の助けにはなるだろう

でも、俺でなくてもできる只のお使いだ


箱の中身の持ち主の家庭教師を任されて

彼を強くすることは彼の助けにはなるだろう

でもそんなのは間接的で

俺でなくてもできる只の利用で


彼の助けをできても

俺が彼を守ることができなかった

俺が彼を支えることはできなかった


ある日に流れてきた10年後の出来事

彼を…守れなかった

助けはできても

俺はいなくても大丈夫だったのかもしれない


継承式が来て

山本のことを隠されて

信用されてないのかな、と思った

シモンが攻撃してきて

助けすらできなくて


あぁ、でも


『オレは友達のために


戦いたいんです!!』


彼の強い意志と

強い瞳で分かった

あぁ、なんだ
ずっと…ずっと前から気付いてたけど


もう、俺の存在は彼にはいらないんだ








「リボーン」

ある日の夜に呼び出された酒場

ツナと出会ってからいつの間にか10年と言う月日が経っていた

記憶に流れてきたような破滅の世界は存在していなかった

彼が、気丈で、強くあって

俺を気付かせたあの日から何一つ変わらない

強い意志と強い瞳で今の世界を作り上げていたから

「やっと来たかへなちょこ。俺を待たせるとはいい度胸じゃねぇか」

「知ってんだろこっちが抗争起きてたの。これでもかなり早く切り上げたんだぜ」

カウンターに座っているのはかつての俺の家庭教師。昔から変わらないトレードマークのもみ上げに黒い帽子。肩に乗せたカメレオンに…

「昔から変わらずいい男だろ?」

「はいはい。んで、用は何だよ」

隣に腰掛け酒を頼もうとしたらすかさずリボーンが2つウイスキーを頼んだ

「今日あたりが抗争収まる頃だと思ってな。俺の奢りだ」

「今日がって…収まらなかったらどうしたんだよ」

「俺から呼び出しがかかった時点で巻くだろ?俺の予想を裏切るなんざ俺の生徒じゃねぇ。違うか?」

本当、彼には昔から敵わない

「本当に奢りなのか?あとでツケとか条件出したりしねぇな?」

「しねぇよ。強いて言うなら極珍しい大変貴重な俺の奢りだ。出された酒は全て飲めよ」

何だそんなことか
酒には割りと自信がある
特に問題は無いだろう




「……………………」

いつのまにか

意識が飛んでいた

「お客さん、閉店の時間だよ」

声が右から左へと抜けた
マスターらしき人が多分俺に話しかけた

でもなんにも頭回らなくて
ぐるぐるして
あぁー…気持ち悪い…

すべての音が耳に入らない。俺の鼓動がうるさくて

「すみませんっ」

あぁ…何か懐かしい声色が聞こえる
最後に聞いたのはいつだったか

「あの金髪の兄ちゃんはアンタの連れかい?」

「連れと言うかなんと言うか…」

「何でもいいが知り合いなら持って帰っておくれ。こちらも店を閉めたいんでな…」

何か話してる
多分俺のこと

入っても抜けていく音の中で唯一、うまく聞き取れはしないが、中に残る声がする

あれ…俺夢見てるのかな……起きたと思いながらまだ意識飛んでるのかな

「ディーノさーん。分かりますか?」

揺さぶられたりひらひらさせたり…目の前に何か見えている

「……………つなかなぁ」

「そうですよー。ツナですよー。歩けますか?」

わぁ………
俺の前にツナがいるんだ…
このまま夢見ててぇなぁ…

「立ち上がれますか?」

何も考えず
只、目の前にいるツナを呆然と見ていた

ここ動かなきゃ駄目かなぁ…起きたくねぇなぁ……

「あぁーもう…っ!!ほらっ!!支えますから!!帰りますよっ」

引っ張られて、覚束ない足取りで

変な浮遊感があって、地に足がつかなくて

でも……何かが俺を支えてくれてる。小さい何かが

「……………つな…」

「はい、何ですか?ほら。歩きながらですよ。ちゃんと話聞きますから!!」

ゆっくりとゆっくりと歩く
歩きにくいけど少しずつ

夢なのかなぁ
だって俺ちゃんと歩いてない

だって、俺よりも全然小さい彼が俺を支えて歩いてくれてる

「はい、はい、いっちにっ!!いっちにっ!!」

外の空気は意外に涼しくて頭に刺さる

だからこそ、俺を支える彼が一層温かく感じて

ずっと、俺が助けたくて

ずっと、俺が支えたくて

ずっと、俺が守りたくて

ずっと………会いたかった彼が


俺を支えながら歩いてくれてる

「……………っ」

悲しさとか情けなさとか切なさとか嬉しさとか愛しさとか

色んな感情が相まって

「どうしました?気持ち悪いんですか……」

何かが目から出てた

「……………ディーノさんって泣き上戸ですか?」

何故か泣きながら歩いて

あやされながら、支えられながら

俺の部屋まで連れてきてくれた


ベッドに放り出された

その後に濡れタオルを用意してくれた

「大丈夫ですか?リボーンに聞きましたよ!!ディーノさんが飲み過ぎて帰れなくなってるって!!もう急いで出てきたんですよー」

今、コイツの目には俺はどんな風に映ってるのかな?

情けない兄貴分かな

あっ、やっべ…
涙…とまんね……

「ああぁぁもうっよしよしっ」

何かもう頭とか全然回らなくて

情けなくても何でもいいから泣きたくて

酔ってるからいいよなとか思って

ツナに秘めた想いとか全部吐き出したくて

ツナにしがみついて泣いた

「………大丈夫ですよ。ここにいますからね。よしよし…」

8つも下の小さな彼にあやされて

頭を撫でられて

何かもうそれがまた辛くて


「………もう、おれなんか…いらないんだ」

何も考えずに思ったことそのまま口走った

「つなは…つよくなったから……おれとちがって、すぐつよくなって…つなにはおれなんていらないんだ…」

もう呂律なんか回んなくて言いたいこといってふて寝してやろうと思った

だってどうせこれは夢だから

ツナが俺を迎えになんて

ツナが俺を支えるなんて

ツナが俺をあやすなんて

ツナが俺の横にいるなんて


どうせ、全て、全て、夢なんだ

「……………いらなくなんて、ないですよ」

ぎゅぅって抱き締められた温もりと強さが心地よくて


そのまま、また、意識を飛ばした








「…………………」

目を覚ましてまず思ったのは酷い頭痛

酷い気だるさ

そして

「おはようございます」

なんで一緒のベッドにツナがいる

「酷い顔してますねー。ディーノさんかっこいいのに台無しですよ?」

顔をぺたぺたとさわられ、髪をぐしゃぐしゃとされる

でもあまりにもダルくて反抗も何もできない

「昨夜のこと覚えてますか?」

夢見てた気がするくらいだ
そして正直口を動かすのもダルい

「………ディーノさんが何か酷い勘違いしてたから俺言いますけどね」

真面目な顔をしてるくせになすがままの俺で遊んでいる。顔を伸ばすな……

「お、俺にとってディーノさんって結構特別な存在なんですよ?」

何か手の動きが忙しくなった

「初めて会ったとき、すげぇかっこいいって思ったし。強かったし。仲間思いだし。俺の憧れだったんです。あなたみたいになりたいって思いました」

伏し目がちの目。意外に長い睫毛は、俺の顔が遊ばれてるせいで時々しか見えない

「ヴァリアーとの戦いも、未来…と言うか過去で戦った今とか…あれ?あ、いや、とにかく、ディーノさんが来てくれたってことがすげぇ心強くて」

パンッ!!て顔を叩かれて挟まれた。いてぇ……

「……………俺、ディーノさんのこと好きなんですよ」

上目に睨まれた

「……………うそだぁ」

これが、今日の第一声

「ちょっ!!嘘ってなんですか!!嘘じゃないです!!てか俺の必死の告白スルーですか!?」

何かぽかすか叩かれた。痛くはないけど二日酔いの体にはすごく響く

「………だってツナ俺のこといらねぇだろ」

「だぁかぁらぁっ!!それが勘違いだって言ってるんですっ!!もうっ!!返事くださいよっ!!断られたら断られたですぐ出ていくんですから!!今だって…今だって俺めっちゃドキドキしてるんですからねっ!?」

手を心臓に持ってかれた
すごく早い鼓動が手に伝わる

「……………だって、俺ばっかずっとツナに片思いじゃん」

心音だって聞いてるのに
本当に俺といるからなのかが分からなくて

やっぱ二日酔いで回ってない頭で口走った言葉

そして


息ができなくなった


「……………ん、」

何か生暖かいものが唇をすべっていった

「っうぇ………好きな人との初めてのキスが酒臭いとか俺ちょっと泣きたいです…」

なんて言ってる癖に

顔は、すごく真っ赤だった

衝動だった

頭回らないし。二日酔いだし。もういいよな

体を起こして、ツナの体をシーツに縫い付けて

貪った

噎せようが、酒臭かろうが、関係無く、只本能に任せて

只の獣のように

しかし

「……………きもちわるぃ…」


二日酔いに勝てなかった

「ちょっちょっと!!えっ!?ここまでしといて!?俺どうするんですか!?うわぁってか俺を潰したまま寝ないでくださいいぃっ」


俺達の始まりはもう最悪すぎて

色んな意味で忘れられない日になった

そして思うことは



やっぱ、俺等は

最強の家庭教師には勝てないと言うことだった


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あとがき
夏コミ前日がどうした!!
ディノツナに荒ぶりましたすみません

ネガティブなディーノさんって萌えませんか?お互いにお互い思い続けるのに言わないんです。自信が無いから

あとディーノさんはお酒きっと強いと思います。でも先生には勝てません。お酒は題名の通り。ウイスキーのストレート!!すげぇ!!私は絶対飲めない!!

ディーノさんをお酒ネタでいじめるのは2回目。だっておもしろいんだもの(´・ω・`)

きっと先生は2人がお互いに想い合ってるの知っててディーノさん潰してツナを迎えに行かせたんだ

そしてロマンも何も無い終わり方…


2011.08.11



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