俺と親友と


日が傾いてきた

もう皆帰って静かな教室に

俺達は何をするでもなくぽつんといた

「………もう終わりなんだねぇ」

しみじみと、言った
学生が終わって……日本での生活も終わり

「山本まだ帰ってこないね」

「いいじゃないっすか別に」

「よくないよ。山本も大事な友達だ」

山本は野球部で正式な引退のイベントをしている。そして俺達はぼーっと待ってた

手持ちぶさたになってとりあえず机に手を入れた

「あ」

やっべ

「どうかされました?」

苦笑いしちゃった

「プリントの持ち帰り忘れ。しかも……テストの山」

どっさりと出てきた

「何で持ち帰らなかったんですか?」

何でだろ……

「何かさ…前は点数が悪すぎて持ち帰れなかったり隠したりだったんだけど……いつの間にかこうなって」

ちょっとした現実逃避だったのかもしれない

悪くて60行かないくらい。昔の俺からしたら信じられないなぁ…

「獄寺君はちゃんと片付け全部終わってる?」

「あぁー………ぐっしゃぐしゃっす…」

やっぱりなぁ

「整理しよ。もう……最後なんだから。ちゃんと片付けよう」

ここに、置き忘れがないように

「…敢えて置いてくのもいいんじゃねぇの?」

聞き慣れた声が入ってきた

「お帰り山本。お別れすん………何かすごいワイルドだね」

ボタンがブレザーもシャツもほとんど取られていて色んなものを抱えている。さすが有名人

「皆すげぇ形相で来るからついつい、な!!」

見事にギリギリまで取られている。獄寺君はずっと逃げ回ってたから無事だったようだ

「あれ?2人とも第2ボタン誰かにあげたんだ?」

あぁ、でもこの2人なら何も気にせずにとりあえずぽんっとあげちゃうのかな?

ん?でも獄寺君第2ボタンだけ……?

「あぁ、あげたい人がいて」

幸せだなぁその子

「こいつと被るなんて思ってなかったんですが…」

うわぁ……他の女の子知ったら大変なことになるぞ…

「てわけで受け取ってくれるよな!!」

「お、俺のも貰ってくれますよね!?」


………………俺かよ!!







ボタンを押し付けられた…うん、まぁ見る人が見たら超ラッキーな俺はとりあえずテストの整理をしていた

と言うか2人もテストの整理をしていた。何で俺達は3人揃って片付けてないんだ……あんだけ先生に言われてたのに

「俺さぁ………ほぼ1年分のテスト入ってるわ」

山本……机の中はブラックホールなの?

「ん……?あ、俺もだ」

全然人のこと言えなかった。獄寺君の机もあの調子だ。きっと1年分入ってるに違いない

全員整理し終わって自然と俺の席へ集まる

テスト見せ合いなんてして笑ってた。獄寺君はやっぱり頭いいんだなぁ……

でも山本のも見て1つ気付いたことがある

「…俺だけ100点取ってないんだなぁ」

ちょっと悔しい。ケアレスミスで満点逃したりしたケースが多々ある……

2人が顔を見合わせたと思ったら徐に鞄を漁りだし何か書き始めた

「さぁ、10代目。今からテストです」

「5分以内で終わらせてくださいー!!」

そう言って渡された紙を見て笑みがこぼれた


『俺達が出会ったのは何年何組の時か』

『ダイナマイトぶっぱなす奴誰か』

『野球のことしか考えてない馬鹿は誰か』

『学校大好きなのは』

『芝生頭の口癖』

『いつも元気なちび達を全員書いて』

『骸達が住んでるとこは』

「………………」



『沢田綱吉くんの親友×2は誰ですか』






「獄寺先生!!山本先生!!沢田綱吉テスト終わりました!!」

5分もかからないよ

「10代目さすがです、100点満点!!」

「これで俺等全員ゲットなのな」

すごい簡単なものだって思うかもしれないけど、昔の俺なら確実にとれなかった100点だ

本当……この数年で色んなことがあったんだなぁ…


とかまたしみじみ考えてたら獄寺君が紙飛行機作って飛ばし始めた。何をしてるんだ君は

って山本も作り始めたし…

「紙飛行機って人によって作り方違うよな〜」

「そうだねー」

そして俺も作り始めた
飛ばし合ってみたらやっぱ一番飛んだのは獄寺君だった

「なんかさ、昔の歌でテストの裏に夢を書いて紙飛行機にして飛ばすやつなかったっけ?」

あ、すごい懐かしいなぁ
俺の場合夢じゃなくて落書きばかりだったけど

山本も見てた感じでは落書きばかり。獄寺君は謎の暗号みたいなもの

「2人の夢は何だった?」

「うーん……マフィアのボスでしたね…」

「プロ野球選手」

「2人らしいや。俺は巨大ロボ」

なんて非現実……

「俺、ガキの頃ボールに星書いたの並べて龍が出てくるの待ってたぜ」

「俺はダイナマイト立てて呪文唱えてました」

今の2人からはそんなこと想像できなくて、なんだか子供らしくて可愛くて笑ってしまった。2人も笑ってた

「………3人とも夢は、叶わないんだね」

何だか申し訳なくなった
2人がいなきゃ俺は今の俺に出会えなかったけど俺がいなければ2人は夢を叶えられたかもしれない

「昔の夢なんかどうでもよくなるくらい、今の俺は素晴らしい立場にいますよ」

「ツナいなかったら、あのスランプで野球止めただろうし、野球より大事なものも見付けられなかった」

感謝してるんだって言ってくれた。感謝してるのは俺なのに

「みんなで感謝し合えばいいんじゃね?今までのことも…そしてこの先も」

そっかぁ……そうだね…



「………ねぇ、さっきの歌みたいにさ。テストの裏に夢書いて、紙飛行機飛ばしてみない?」

そしてね、

「3人で拾いに行って、拾ったテストに書いてあった夢を叶えてあげるの」

青春ぽいじゃん?

「面白そうなのな」

「10代目の夢は俺が叶えます!!」

「じゃあ獄寺君頑張って俺の拾ってね」

にっこり笑ったら黙り込んでしまった。扱いにも慣れるもんだなぁ…




「終わった?」

「はいっ!!」

「バッチリなのな!!」

窓を開けて、俺達は夢を投げた

3つの夢はいつの間にか夕焼けになっていた空を渡って落ちていった

「…じゃあ、荷物持って拾いに行こうか。この場所ともお別れしよう」

机に俺達がいた証を落書きして、最後になんと無く礼をした

落書きはすぐ消えてしまうだろうし、礼を見てるのも誰もいないけど、俺達には意味のあるものだと思う

さぁ、夢に向かって歩き出そう


誰が誰の夢を叶えるのかは拾うまでのお楽しみ


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あとがき
目指したのは青春な元祖サンド!!多分無駄に青春できてると思う←


この話自体は1月24日に完成しました。でも予定よりも卒業式風味の話になったので私の卒業式に合わせて更新にしました


私の学生最後の卒業式は、東北地方太平洋沖地震による様々な影響で無くなりましたが、友人達が無事であったことが何よりです


笑い合えることが本当に幸せだ、と思います^^この3人のように!!


2011.03.22



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