原稿用紙25枚


今日は、俺が頑張って言うって、決めてたんだ


『じゃあ、10代目そろそろ…』


「あ、あのさっ!!獄寺君!!!!」


俺が、頑張って、言うんだ


『はい、何ですか?』


俺が…がんばっ、て……


『…………』


……………っ


『あ、あの!!10代目!!よ、よろしければ、今度の週末俺の家に来ませんか!?』



そして、頑張れなかった結果がこれだ














「行ってきまーす」


約束通り、今日は獄寺君の家にお泊まり。勿論………勉強道具を片手に


「あ、ちょっと待って!!はいっ、これ。いつも獄寺君にはお世話になってるから母さんからの差し入れよ」


と言って渡されたのは緑茶にコーヒー、ココアに紅茶……母さん、これ…確か余り物じゃ……


「あと、ご飯も作ったからこれも持ってって!!」


タッパーに入れられて渡されたご飯。結構量があるみたいだけど、昼と夜かな


うん、料理ならちゃんと喜んでくれそう。いや、何持っていっても喜びそうだけど……


「じゃあ、行ってきます」


「気を付けてね!!迷惑かけちゃ駄目よ!!夜更かしは程々にしなさいね!!」


はいはい。まぁ…夜更かしは、ちょっと……約束できないかもしれないけど






「って!!何考えてんの!?」



「は、はいっ!!すみませんでした!!!!」



……………え?何か変なところから声聞こえてきたよ?あぁ、てかそうだ。彼が俺1人を向かわせる訳が無い


後ろ振り向いたら電柱に隠れきれてない獄寺君


「お、おはようございます10代目……」


「………うん、おはよ」


ちょっと気まずそうにしながらも隣に来させて一緒に家へ向かった


途中スーパーで何か買い物とか話したけど飲み物も食べ物も俺の手元にある。だからコンビニで少しお菓子を買うだけにして、早々と獄寺君の家に向かった


「お邪魔します」


いつ来ても綺麗に片付けられたシンプルな部屋。黒と白が基調で、でも1つ1つがすごくお洒落


テーブルや棚に然り気無く置かれている灰皿とかジッポー、アクセとかも実は好き


「あ、す、すみません!!片付け忘れてて!!」


俺がそれらに気付くとすぐ片付けてしまう。過去に見るの好きだからいいよ、って言ったにも関わらず嫌らしい


俺が泊まりに来ると、この空間では煙草を吸わないのは彼の優しさ。でも来るといつもの煙草の匂いがする


我慢しなくてもいいのに、とか思うんだけど、彼なりの気遣いが嬉しいから、意地悪かもしれないけど黙っておくんだ


「………じゃあ、宿題やっちゃおうか」


「そうですね」


「うん、だからね?この状況をやめてくれないかな!?」


ずっと大通り通ってきたからなのか我慢できなかったのか後ろからぎゅーってされてる


「………今は充電です」


君は充電しすぎると発動しちゃうんだよ…!!あぁっ、もう!!


「………せっかくだし俺何か飲みたいなぁ」


ぼそっと呟くとはっ!!としたように彼が離れる


「す、す、すみません!!今ご用意します!!せっかくですし…お母様からいただいたの何か出しますか??」


勉強だと何がいいのかな……眠気覚ましには…


「………コーヒーがいいか、な」


ちょっとびっくりした顔をしたけどすぐ笑顔に戻り準備をしに行ってくれた。その間に俺は勉強の準備。また構われちゃいそうだしね…


本当はね、俺も宿題なんかほったらかして君と話してたい。抱き締め合いたい


でも、宿題はどうしても終わらせなきゃいけないものな訳で、後で焦るよりは最初に終わらせちゃえば、ずっと………


「10代目、コーヒー入りましたよ」


「あ、ありがとう」


うん、何かやる気出た。早く終わらせよう。お、俺だって……ぎゅってするんだ


そして、ここでも然り気無い優しさ。コーヒーには既にミルクと砂糖が入れられている。それに足りなかったときの為か砂糖も用意されて


何か、幸せ者だよな、俺
















「あああぁっ!!もうまだ終わんない…!!」


獄寺君はとっくに終わらせたのに対し、俺はと言うと。もう、ね、うん。予想通りだけどさ…


「すみません、俺が不甲斐ないばかりに…」


いや、不甲斐ないのは俺だ。せっかく獄寺君が教えてくれてるのに理解が追い付かない


「少し休憩しましょうか。結構集中してやってましたし、お菓子でも食べましょう」


俺は頭がパンクしてて動けそうに無い。と言うか仮に俺が行ってもややこしくなってこじれて終わる。結局はいつも獄寺君がやってくれるから素直に甘える


(お菓子って何買ったんだっけ………)


「お待たせしました」


突っ伏してる俺の目の前に置かれたのは買った覚えが全く無いケーキと母さんがくれた紅茶


「………何これ?」


「10代目をお迎えに行く前に買った今日用のお菓子です」


いや、そもそも君のあれは迎えじゃなかった気がするんだけど。いや、それは別にいいんだけど


しかもきたよナミモリーヌ……うん、美味しいよね!!うん!!!!


「べ、別にモノで釣られようなんて思ってないからね?」


突っ伏したままちらって向いた


「俺も、あなたをモノで釣ろうなんて考えてませんよ。さ、食べましょう」


漸く起き上がってフォークを取る。うん………やっぱり美味しい。紅茶もすごくいい香り。上手な淹れ方を知ってるんだろうなぁ…


「食べて少し休憩したらまた頑張りましょう。俺何でも答えますから!!」


何でも、かぁ………


「うーん…じゃあさ」


「あ、別に今じゃなくていいんですよ!?ゆっくり休まれた方が…」


いいんだよ、今で


「………獄寺君はさ、いつから俺のこと好きだった?」


フリーズした


それはもう目を見開いたまま


ちょっと面白い


「い、いつから……ですか…」


「うん。何でも答えてくれるんでしょ?」


最初は違ったと思うけど。何せ俺殺されそうだったもんね


「………多分、きっかけは。あなたに助けていただいたときかと…」


ダイナマイト……いや、あれは俺であって俺でない気がしなくもないんだけど


「あなたに認めてもらいたいって思って、あなたを守りたいって思って……自分本位に生きてきた俺が初めて他人を考えるようになって」


ケーキをまた一口。とても甘い


「あぁ、俺この人が好きなんだなぁって…思いました」


更に甘い言葉を吐いた獄寺君に俺のケーキを一口突っ込んだ


「ふぐっ!?じゅ、じゅらいふぇ……」


甘いもの苦手なのは知ってる。俺も結構君のこと分かってるんだからな!!


「………俺、いつからか獄寺君好きか分からないや」


ショックな顔するかなぁって思ったら意外に普通だった


「いつからなんて構いません。今、こうやって、その…俺を好きでいてくださることが嬉しいんで」


そしてキスされた。やっぱり甘かった


「……………宿題の作文が好きな人についてだったらよかったのに」


まだ終わらせてない宿題の山の中から400字詰めの原稿用紙を見付けた


「そしたら俺全然足りないっス」


俺は、好きって気持ちは大きいんだけど言葉にはうまくできない。でも、色んなこと覚えてる


「25枚書くと10000文字かぁ……結構いちまんって多いんだね」


「お、俺!!25枚以上書く自信あります!!」


俺は………


「思い出とか書ければ25枚以上書けるかなぁ」


口下手だから『好き』の単語しかできない


「ねぇ、獄寺君。初めてのデート覚えてる??」


苦笑いされた。覚えてるんだ


「ランボがついてくるってうるさくて母さんもその日は出掛けちゃってて、イーピンもフゥ太も何故かその日は聞き分け悪くて」


「………そっすね(あなたを取られたくなかっただけだと思いますが)」


「2回目は山本に見付かってそのまま3人でお茶。3回目は獄寺君が迎えに来てくれたと同時にビアンキが出てきちゃって」


ずっとずっと失敗続き。何故かうまい具合にデートの日に限って


「……初めて成功したのは10回目だったね」


諦めて現地集合にした。あの日に行ったのは


「水族館…でしたね」


意外にも獄寺君の方がはしゃいでた。色んなこと知ってるからそれを身近に見て楽しかったのかなって思う。俺も興味を持った魚とかに関して色々教えてもらった


俺が一番はしゃいだのはイルカとかのショー。皆色んなことができるし、水飛ばされたりもした。楽しかったなぁ


俺は物覚え悪いけど、獄寺君との思い出は沢山出てくる


一枚、一枚、アルバムを捲るように。鮮明に出てくる。好きな人とだから……なんだろうなぁ


「…………獄寺君は写真撮りたい?」


俺は恥ずかしいからっていつも断ってた。でも、今は、撮ってなかったからこそこんなに覚えてる気もするんだよね


「………デートにつき1枚は欲しいです」


「じゃあ1枚だけ。撮りすぎると、写真があるからってその日の思い出薄くなっちゃいそうだから…俺はそれは嫌かな」


「はい…だから1枚かなって思いました。俺もあなたも同じこと考えててすごい嬉しいです」


目の前の甘いケーキはいつの間にか食べきっていて、甘さ控えめの紅茶だけが残っていた


「10代目、好きです」


またキスされて、もうケーキは突っ込んでないのに甘い気がした。ちょっと恥ずかしい


「………また夜やりましょう」


「どっちを?」


決まってます、って言いながら今度は深くキスされた


「…紅茶冷めちゃうよ」


「俺がまた淹れ直します」


「宿題……」


「大丈夫です、一緒にやればすぐ終わります」


「そ、そしたら先に宿題の方が…」


「10代目」


うん、分かってる


分かってるよ


だから、さ。そんな目で、表情で見つめないでほしい



「………俺だって、我慢してたんだから」



宿題が終わるのは、いつになるやら…


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あとがき
10000HIT踏んでくださった華希様からリクをいただきました!!いただいたと言うよりしてください並みなノリを仕掛けていた気がする

なのに本当にリクをくださりありがとうございます!!「獄ツナ甘」ですよ!!甘いかな?笑


ココアの甘さとか無駄に使いたかったけどタイミングを見失った← 原稿用紙25枚で10000字とかHIT数にかけてみてました。無理矢理vvvv


それにしても彼等は甘いの書きやすいな…笑


2011.03.05



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