この気持ちに名前をつけるなら


雲ツナ好きな方々には申し訳無いラストになってます…

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あの日は………そう


『あ、あの…っ、俺っ』


虫酸が走るような言葉で表すのなら


『雲雀さんが好きです…』





麗らかな春の日






「それで?」


彼は目を見開いた。まるでころん、と落っこってしまいそう


「僕とどうしたいの?」


゙群れ゙が嫌いな僕に君は何を求めるの


「え、えと………雲雀さんさえよければ…お付き合い…したいな…なんて……」


付き合って何をするの


手を繋ぐ?冗談じゃない


キスをする?冗談じゃない


「………付き合って何したいの?」


「え、そ、その………」


『一緒にいてくれるだけで、十分です』






虫酸が走った



冗談じゃない













毎朝の点検
まさかこれに私情がはさまってくるなんて誰が思っただろう


「あ、おはようございます!!雲雀さん!!!!」


僕を見るや否や満面の笑みで近づいてくる子が1人。そんな子は1人しかいない


そう。゙1人゙しかいない


「今日もお昼応接室に行きますね!!あ、あと、実は」


「はい、もういいから行きな。邪魔だから」


少し寂しそうな顔を見せたかと思ったら一瞬で笑顔に変わった。「じゃあまたお昼に!!」といつも通りの言葉つき


僕は彼と所謂゙お付き合い゙なんてのをしている


その代わり条件付きだ


『群れるのは許さないよ』


あの子の周りにはいつだって人が溢れている。そしてへらへら笑ってるのが許せない


僕のことが本当に好きなら、僕以外と一緒にいることなんて許さない。どうせすぐ音を上げると思ってた。だから試しに付き合ってみるのもいいと思った


しかし思いの外、彼は言いつけを守っている


登下校は勿論、移動教室、体育でさえも。チーム組むのは仕方無いから目を瞑っている。とてもイライラしているけど


(君は…そんなに僕が好きなんだ…?)










「雲雀さーん!!」


朝の取り締まりが終われば黙々と作業をし続ける。昼になったら現れる彼はまるでアラームだ


「実はですね……!!」


何かうきうきした顔してる。癪に触るな………


「ジャーン!!お弁当用意してみました!!!!」


自信満々に差し出された1つの箱。中身はご飯、お浸し、お新香………ん?


「………ハンバーグだ」


「はいっ!!前、色々質問したときに一番最初に答えてくれたのが好きな食べ物だったので…」


あぁ、そういえばやたら質問してくるなって思って最初は無視してたけど段々煩くなってきたからとりあえずはっきりしてたの答えたんだっけ


「朝だと時間無くなっちゃうから昨夜母さんに教えてもらって作ってみたんです!!」


なんて意気込んで言われても


「……………ぐちゃぐちゃだね」


動きが固まった。さすがに本人も気付いているか


「さすがに初めてだとうまくいかなくて…あ、でもこれでも雲雀さん用には一番最初に形がいいのを取ったんです!!昨夜食べてみて特に問題もありませんでした。でもっ」


バンッ


「胃薬はバッチリ持ってきてあります!!!!」


お弁当を差し出す時より自信満々に出された胃薬


「…………ふふっ」


つい笑いがこぼれてしまった。何をしても鈍くさいこの子が僕の為に何かを頑張ってくれるのは悪い気がしない


(しかしこれで一番形がいいって………)


疑念を抱きつつ一口食べてみた


「………………思ったよりまずくないね」


「そ、それは…どういう反応を示せばいいんでしょうか……」


本当鈍くさいね
食べきった。うん、ごちそうさま


「まずかったらもう食べないよ。そうだね、次に期待してる」


パッと笑顔が戻ってきた。君はころころ表情が変わるね。見てて飽きない


一緒にいる時間も何だかいいかもしれない














本当にね、僕は、そう思ってたんだよ
















5月の頭。もうすぐ付き合って1ヶ月が経とうとする


月日の流れを気にしたこともなかったのに。少しだけ楽しみにもなったりする


ちょうど連休になってしまうからしばらく会えない。学校に来てもいいよとは言ったけど


『宿題が多くて…あ、ただあの日までには全て終わらせます!!その日は、朝から来てもいいですか!?』




待ってるよ




僕はそう伝えた


そう、待ってる筈だったんだよ



『──────』


ねぇ


『──────』


君は何でその人と話してるの


『──────』


何でそんな楽しそうに話してるの


『──────』


何でそんな嬉しそうな顔をしてるの







何で、僕以外に、笑顔を見せるの



許さない


「雲雀さんっ!!」


約束を破ったのは君だ


「久しぶりですね…なんて俺が課題終わらなかったせいなんですが…」


全て、自惚れだったんだ


「あ、あの!!これ!!」


いつかのお弁当の様に差し出された何かの箱を思い切り払い除けた


「え………ひばり、さん…?」


箱は角が潰れ何かがはみ出している。あぁ…


思い切り、踏みつけてやった


「……………っ」


まんまるの目


こぼれてしまいそう


涙はこぼれたけど


「お、おれ………なにか…しました、か……っ」


声が震えている
なにかした?
何かした?
何かしただって!?


「君は………僕との約束を破ったんだ」


踏みにじった箱はもはや変形して、中身も溢れている。靴まで汚れてしまった。ムカつく


「群れるなって言ったよね?その日から君はずっと1人でいたのに、僕としか一緒にいなかったのに、どうして約束を守れなかったの?」


何のことか分からない、とでも言いたげだ


何。何ソレ


僕は油断していたよ


「君は僕のことなんて好きじゃなかったんだ。約束守ったふりして、好意をあるように見せて、こんなものまで用意して、僕を遊んでただけなんでしょう?じゃなきゃあの人と話なんてするはずないじゃないか」


違う、違う、そう言いながら首振ったって駄目だよ


「草壁」


一言ですぐ現れる下僕


「このゴミ、片付けておいて」


「っ、し、しかし委員長!!こちらは…」


「煩いよ。君はいつから僕に指図できるようになったの?咬み殺すよ」


一発睨めばすぐ言うことを聞く。君はこういう感じでなかったのに…約束を守りながら自由でいたのに


あぁ、だから破るんだ


「早く出ていきなよ」


もう何も見えてないし聞こえていない感じで、全く動かない。まるで人形の様に


一発殴り更に「もう顔も見たくない」と吐き捨てた。すぐに気が付いたのかごめんなさいって小さく言いながら去った


最後に更に小さな声で「ありがとうございました」の言葉を残して















「よぉ!!きょう…ってうわあ!?いきなり何すんだよ!?」


そしてその日の夕方にあの人が来た。前々からこの外人目障りだと思っていたけどここまで咬み殺したくなったのは初めてだ


「…………お前ツナに何したんだよ」


…っ!!!!


「いやっ、だから!!ガキじゃねえんだから力で片付けようとすんな!!ちゃんと口で言えよ!!」


「あなたには関係無いよ」


ムカつく。ムカつく。ムカつく


『雲雀さん』


あの笑顔を見るのを楽しみにしていたのに


群れなくなって僕にだけ見せていたのに


「……………ツナが俺と話してたことに嫉妬したんだろ?」


嫉妬?違うよ。約束を破ったから怒ってるんだよ


「アイツが俺に何を言いに来たと思う」


そんなの興味無いよ。もう関係無いからね


「5日だけは修行しないでくれって頼みに来たんだぜ?」


はぁ?何それ


「記念日ってだけじゃなくて、恭弥の誕生日も一緒に祝いたいって照れながらな」


…………誕生、日…?


「自分の誕生日に興味なんて示さなそうだからびっくりさせたいんだって…楽しそうに話してたんだよ」


あの笑顔は………僕の為に…?


そういえば今日のあの子は………目の下にはクマがあった。手には火傷の跡がいっぱいあった


その結果を………踏みつけたのは僕…


「………どの道アイツはもうお前に会いに来ねぇよ。帰ってきてすぐ俺に泣きついてきたからな」


何ソレ……思わず失笑しちゃったじゃない


「それでもお前が会いたいって言うなら…」


「いらないよ」


彼の過ちはこの人と話してしまったこと


僕の過ちは彼を勘違いしてしまったこと


彼の過ちを許さなかったのに僕の過ちは棚に上げて会いに行く?冗談じゃない


「ま、別にいいけどな。つまりは俺がツナを貰っても何の問題も無いわけだ」


「僕にはもう関係の無い話だからね」



まだ何か言いたげな顔をしていたけど大人しく出ていった







窓からはちょうど桜が見える。僕と長年ここにいる木が1つ


これだけは例年よりずっと咲いていたのに、今日になってどんどん散っていった


彼とお花見したいと思ってた。今日はゆっくり花吹雪見れるかもしれないと思った。その希望を叶えようとしてくれてたのかな?まるで君は僕に……………




「あぁ、そうか…」




僕は、あの子に゙恋゙をしていたんだ


そうか………
いつか誰かが『初恋は実らない』なんて言っていた


それは、案外本当なのかもしれない


キスも手を繋ぐことすらしなかった、とても拙く短い恋


…涙なんて流さないよ


僕に恋してるあの桜が、散り続けているからね


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あとがき
まずは、雲ツナ好きの方々に謝ることから入りますよねすみません…!!

え、私初めて書いた雲ツナがこれって…いや、何か失って初めて気付いた的なのが似合いすぎるのが彼で←

むしろ師弟サンドくさいですね!!トモコレで雲雀さんにフラれたつなたんがでぃのさんと付き合って結婚したとかからネタが膨らんで書きましたごめんなさいいぃ!!!!

2011.01.07



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