屋上


相変わらず微ヤンデレ
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「ふぅ……」

漸く終わった…

今回は任務で遠征。すぐ終わらせるはずが中々手間取ってしまった

「………生温い」

鉄臭い手のひら。昔はバットで鉄臭くなったりもしたっけなぁ…

「………一服すっか」

獄寺の影響か何か分からねぇけどいつの間にか煙草を吸うようになった。昔はスポーツマンだからって断固拒否してた

この10年間で俺は人生の全てが変わった。でも、それでも

「………後悔はしてない」




アジトに戻ってこれたのはもう深夜になった頃。本来ならここで報告に行くのだが俺にはその前にやる日課があった


『………後悔はしてない』

本当か

本当に後悔してないのか。今なら死んでも何も思い残すことは無いのか

それを確かめに行くんだ


ぐっ、と力を入れて重い扉を開ける。これが最後になる可能性が無いわけでない

「よいしょっと………」


「おかえり。遅かったね」


予想もしない人物がいた。俺の日課に予想外のイベントである

愛して止まない、初恋の人


「………何でここにいるんだ?」

「それをそっくりそのまま返すよ。何でここに来るの?」

随分と口が達者になったものだ。いや、別に皮肉でも何でもなく

「………どうしてだと思う?」

「分かりきってる。山本がここに来るなんて………」

゙自殺しか考えられない゙


「正解。さすが分かってるのな」

手を挙げておどけてみせる。いわゆるお手上げ状態。あ、そのまんまだ

「………毎回ここに来んだ」

何もかも見透かしたような瞳で見てきやがる

「今、ここで飛び降りて、後悔するのか、しないのか………」

「………後悔を…するの?」

前言撤回だ。ツナは何も分かっちゃいなかった

何だかイライラして、今立っていた扉の前から全力疾走をしてある所へ行った

「俺な、最高でここまで来たことあるのな」

あまりにも予想外の行動をしてやったみたいで驚いたままツナは動かない

「いつだと思う?」

満面の笑みでわざと明るく聞いてみる

ここは、あと一歩踏み出せば闇へと吸い込まれ、俺は只の醜い人だったモノへとなるだろう

そう、フェンスの外側

「な、いつだと思う?」

尚聞いてみる。意地悪。意地悪。俺は意地悪

「お前がいなくなったとき」

顔が歪んだ。予想してた?俺の言葉突き刺さった?

「俺、お前に何も伝えてねぇのに、何もしてねぇのに、勝手にいなくなった。勝手に死んだ」

あの時の絶望……

「あの日からな、ずっと雨が降ってたんだよ。俺の雨はずっとやまなかった。ずっとずっと」

毎晩、酒に溺れて、泣き続けて

「もう限界を迎えてたんだ」

『あそこへ行こう』

「勝手に向かってたんだよ」

『また、止めに来てくれるかもしれない』

「気付いたらな、ここに立ってた」

『来ない。来ない。もう、駄目なんだ』

「分かるだろ?愛する人を失ったら追い掛けたくなるの」

なのに、なのにさ

急に部下から連絡が入って

『ボスからの手紙が届いてるんです!!!!』

最初に思ったのは嘘だ

次に思ったのはやっぱり助けに来てくれた

『時間がないから用件だけ。いつの日か、過去の俺が来るから。そしたら彼を助けてあげて、支えてあげて。お願いします。あとね、俺、帰ってくるから。そしたら─────』

「………ツナはずるいのな」



『いつもの笑顔で俺に゙おかえり゙って言ってね』



「結局、あの一言で俺を生かせたんだ」

帰ってこなかったらどうしようかと思った

「………帰ってくるのは本当だった。それに俺はね、愛する人が死んでしまったら………どんなに絶望に陥っても、その人の分まで生きたいって思う」

────だからね…

「………お前の気持ちは分からない。ごめん」

つい、口許が緩んだ

手を伸ばして腕を掴んだ

「なぁ、覚えてる?」

俺達はここから始まったんだ

あの頃俺はツナを馬鹿にしてた

何もできないやつ。勉強の程度は同じだけど他もてんで駄目。なのに、なのに、そんな奴がいきなり目立ち始めて、俺は落ち始めてイライラした

何で、何であんな奴が。悔しくなって少し構って相談したら練習じゃないかな。ありきたりだけど拍子抜けだったけど、やっぱ練習だよな。思い切り練習した

結果、骨折した。駄目だ、駄目だ、もう駄目だ。もう何も無い何も残ってない。駄目だ駄目だ駄目だ

人が集まった中、最後に押し出されて来たアイツ。何だよ、何しに来たんだよ。どの面下げて俺に会いに来るんだよ

『お前の気持ちは分からない』

大分前の言葉をまた前言撤回。お前が一番分かってたよ。何て言うか綺麗事なんかじゃなく、真っ直ぐ自分の気持ちをぶつけてくれた

俺はお前がどんなにすげぇ奴か知ってる


「あの後フェンスぶっ壊れて2人で落ちたよな」

そして助けてくれた

「俺たちは、ここで始まったんだ」

「………そうだね」

まばたきを一回、二回。何か聞きたいのか?何だ?何でも答えるのな

「何で、山本はまだそこにいるの」

核心

「……あの日の手紙を読んで、お前を待ってようと決めた」

だけど、それと同時に

「お前が帰ってきたときに俺がいなかったら、どうなるのかなって」

考えた

「どれだけ悲しんでくれる?どれだけ泣いてくれる?どれだけ狂ってくれる?」

どれだけの愛を自覚できる?

「それでしか、お前からの愛を感じられない気がした」

あ、ツナ泣きそう。何で?何で?悲しい?俺のせい?

「山本は馬鹿だ……しかも大馬鹿だっっっ」

泣くのを堪えたしかめっ面で怒鳴った言葉は馬鹿と来たもんだ

「俺からの愛だ!?何を言うんだよ!!そんなの、そんなのっ………」

あ、涙出てきた

「山本が生きてなきゃ、確かめらんないじゃんか……」

言葉がコトンと、俺の心にハマった

「………俺ね、その言葉が聞きたくて今日まで生きてた」

俺がフェンスの外側にいるにも関わらずすごい形相で迫ってきた

「馬鹿!!馬鹿!!馬鹿!!っ、大好き、だっ……!!これで満足!?これでもう死ぬ!?もういらない!?」

フェンスから、もう片方の腕を差し入れて引き寄せて抱き締めた。あぁ、くそ。もうヒトマスずらすんだった

「ツナ、俺のこと好き?」

「………好き」

「ツナ、俺のこと好き?」

「…好き」

「ツナ、俺のこと好き?」

「好き」

「ツナ、俺のこと好き?」

「好きっ」

「ツナ、俺のこと好き?」

「大好き」

しにくい状況のまま、キスをした

「俺も好き」

抱き締める。フェンス越しで不完全。今の俺達の壁

「山本こっち戻ってきてよ。直接触れさせてよ」

無理だ。今はまだ無理だ


「ツナ、俺を縛って」

あれ、これじゃ只の変態じゃねぇか。違うんだよ。そうじゃねぇんだよ

「俺のこと、束縛して」

毎日好きって言わせて

俺はこういうことでしか愛を示せない

「ツナのこと束縛させて」

毎日愛してるって言って

俺はこういうことでしか愛を感じられない

「それが無理ならもう俺の手を取らないで」

一度手を離し、フェンスをよじ登り上まで立った

「………山本、大好き」

笑顔で両腕を広げてくれた

ゆっくりと降り立ち、今度こそ。しっかりと抱き締めた。俺より一回り小さいけど、強い彼

毎日好きって言って

毎日愛してるって言って

そして

毎日゙生きろ゙って言って

そうしたらきっと


もうここに来ることは無くなるだろうから



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あとがき
題名からも分かると思いますがここは屋上です

山本とツナが本当に出会った場所は屋上だって思うんです

山本の飛び降り自殺アゲインは引き留めたりだとかツナへの言葉だとか書きたいことが沢山あってその結果こんな意味の分からない話になりましたorz

ちなみに元ネタは夢です。全力疾走でフェンスを飛び越えたもっさんは正直面白くてヤンデレどころでなかった←

2010.11.29



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