あなたと俺の2人きりの
珍しく、ぱち、と目を覚ました
今日は雲ひとつ無い快晴の空
きもちいい風
過ごしやすい日
ただそれだけの何でもない普通の日だ。それでも………それでも、今日は何かが違った
(起きよう……)
今日は何かが起こるのは分かっているからか、もう寝る気になどなれなくて洗顔と朝食に下に降りていった
母さんもリボーンもビアンキもちび達ですら俺の早起きに驚いていた。そりゃあ俺も驚いてるから何とも……
朝食等を済ませ再び上に上がり服を選び始めた。今日は何かが起こる。何と無くだけどそれはとても嬉しいことでとても悲しいことな気がする。それにきっと
あの人が来る
『こんにちはー!!』
かっこよくて
『あらまぁいらっしゃい!!ツー君今上にいるわよ』
キラキラしてて
『さんきゅ、ママン!!』
王子様みたいなのに
『うわああぁっ!?』
少しドジな
『いてて……おっと、早く行かなきゃ』
大好きな大好きな、イタリアにいる俺の恋人
「こんにちは、ディーノさん」
「ママンから聞いたぞ、ツナ今日早起きだったんだって?」
「あ、はい。何と無く目が冴えちゃって…」
ディーノさんが入ってくるまでに着替えも何とか済ませることができた。そして、彼の『あるもの』もちゃんと忘れずに持っている
「そうかそうか。俺が来ることでも分かってたか?」
図星に加え、顔が近くて緊張してくる。心臓がばくばく言って破裂しそうだ
「そんな緊張すんなって」
なんて軽いノリで1つ優しくキスを落として抱き締められた
「あーあ、びっくりさせようと思ったのになぁ…」
少しすねた感じで思わず笑ってしまう。と、同時にディーノさんが何かおかしいのを感じた
ディーノさんの心臓の音が聞こえるけど、いつもと違う気がする。俺といる時、緊張してしまうらしく意外にも速いのだ。でも、今日は何か違う
「な、ツナ………」
真剣な声
「……………俺が結婚するって言ったら…どうする……?」
思わず離れそうになった。そしたら更に強い力で抱き締められた
「今じゃねぇよ…こんなにお前が好きで、これからだってずっと好きで、離したくなんかねぇんだから…」
考えたことが無かった訳じゃない。俺達は男同士なだけではない。1つのファミリーのボスなのだ。いずれは結婚し、そして『後継者』を残さなければならない
だけど、まだ先だろうと考えないことにしていた。俺はまだでも、ディーノさんはそういう歳なんだ
「………わり、こんな話して」
ディーノさんの力が少し緩まり、どこか行ってしまうんじゃないかと思ったら、必死にしがみついてしまった
「…どこにも行かねぇよ」
頭を撫でられる。いつもの手付きで少し安心した
「せっかくいい天気だし散歩でも行かねぇか?」
ニカッと笑って、ちゃんと俺を見てくれる。行きたいです
「行きます」
また、笑ってくれた
「いっやぁそれにしても今日はいい天気だなぁ!!」
ぐーっと伸びをしている。ここまで来るのにも疲れるだろうにいつも笑顔で来てくれる。それがすごく、すごく嬉しくて、いつまでも続く気がしていた
でも、そうじゃないって、気付かされて……そんなのが嘘みたいに一緒に歩いてすごくいい天気で…
「ね、ディーノさん。こっち行ってみませんか?」
少し裾を引っ張って人通りが少なそうな裏道を示した。行ったことないけど、今のディーノさんとだと迷子になるかもしれないけど
「お、初めて通る道だな。探検してみるか!!」
別に構わない
(むしろ迷ったまま帰ってこれなくなればいいのに)
まぁ、何と言うか、予想通り迷った俺達。それに
「うわあぁっ」
これまた派手に転んだなぁ
もう何度目か分からない。何回も転んで何回も手を貸して
「大丈夫ですかディーノさん……っへへ」
「何だよ!!笑うなよ!!」
恥ずかしそうに拗ねて、立ち上がるのを手伝うために腕を引っ張って
かっこいいのに、キラキラしてるのに、王子様みたいなのに、ちょっとドジで、大きな子供を見てるみたいで
「ディーノさん可愛いですね」
思わず口に出した
「年上に向かって可愛いとは!!そんな奴にはこうしてやるっ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でられるけど何かそれすらも嬉しくて、俺達は声を出して笑っていた
「しっかし誰もいねぇなぁ」
人通りが少なそうだとは思ったけど、もはや誰もいない。何だか、ここだけ時が止まってるんじゃないかって感覚すら出てきた
「っ!!ディーノさん……」
驚いて上を見たら眩しい笑顔が返ってきた
「誰もいないならさ……いいんじゃね?」
たまには堂々と恋人らしくしようぜ
なんて言いながらぶんぶん繋いだ手を振る。こんなの子供みたい
でも………誰もいないならいっか。ちょっと指絡ませたり、腕を組んだり、ハグされたり、ほっぺにだけキスし合ったり、初めて外で好き放題した
「おぉ……何だかすげぇ建物に着いたな」
「本当ですね……」
目の前にあったのは…洋館…と言うか教会だった。誰もいない場所……それに古びた感じなのにまったく怖さとかを感じない。何だか不思議な場所だ
「…………な、ツナ」
朝に会ったときと同じ、滅多に聞くことの無い真剣な声。1日に二回も聞くなんて
繋いでいた手を両手で包み込まれ、只一言
「結婚しよう、ツナ」
今、此処─教会─には俺達しかいない。まさかの突然のプロポーズ
「本当に…するんですか?」
「俺はしたい。ツナは嫌か?」
嫌なわけがない。でも、俺達は男同士で、ボスで、そもそも俺とかまだ結婚できない年齢で
「ごちゃごちゃ考えるなって」
鼻をつままれた。ちょっと痛い
「俺達の間だけだ。誰にも言わないだろうし誰も見てない、誰も祝福しない。でも………咎めるのも誰もいねぇんだよ」
誰も祝福しないけど誰も咎めない……
「例え皆が知らなくても、俺達……結婚してることになるんですよね」
「あぁ………この先、例え俺達が誰かと結婚したとしても……俺とツナの間にある絆も変わらない」
泣くな……って目元にキスされる。それで更に溢れる
「こーらっ」
こつん、って叩かれて何とか涙を拭う。駄目だ、今こんなに泣いてちゃ駄目だ
「……落ち着いたか?アレは今日バタバタしててまだお互いの持ったままだよな…そんじゃ、歩くぞ」
『新郎新婦の入場です』
ディーノさんが声を張る
腕を組みながらゆっくりゆっくり前へ進む
俺達以外は誰もいない
ウェディングドレスはおろか、タキシードでも、もはやスーツでもない私服な俺達
子供だましだって言われそう
「ツナ」
呼ばれてはっとした。そうだ…ここには俺達しかいないんだ。誰も責めたりも何もしない空間。そう、今は俺達だけの内緒の結婚式
改めて腕をぎゅ、てして前を向いて少しずつ歩く
「本当はここに神父がいんだけどなぁ」
祭壇に着いて何だか苦笑いだ
「順番なんだったっけなぁ……ま、いっか。俺達なりに、な」
向きをこっちに変えたから俺も変えた。今は2人で見つめ合っている
「………俺、ディーノは沢田綱吉を一生愛し続けることを誓います」
何だか違う。ちぐはぐだ。
でも………実は震えながら真っ赤な顔なことに気付いてしまったらどうでもよくなった。一生……愛してくれるんだ
「……俺、沢田綱吉は……でぃ、でぃ………でぃ」
思わずどもった
「ちょ…っ、ツナ!?」
「すすすすみませんっっ」
呼び捨てなんかしたことないから…何て言うか……は、恥ずかしすぎる…っ
「ツナ………」
ちら、って見たら泣きそうな顔……あ、不安にさせちゃってる……違います、違うんです
………大好きなんです
ぎゅ…て手を握った。何かもうめちゃくちゃだけどいいや。俺達の結婚式だもん
「……………俺、沢田綱吉は……でぃ…ディーノ、を一生愛し続けることを誓います…っ」
握った手から体温が伝わってくる。俺の体温も伝わってるかな
「…ツナ、一回離して左手出して」
あ………
俺もディーノさんのを出さなきゃ
2人で買いに行って、店員さんに見られるのもすごく恥ずかしかったけど普段は行かないから開き直って
どうしても離れてしまうから、ディーノさんがイタリアに帰るときに自分のではなくお互いのものを持つようにして
そして………
初めて、俺達は左手にはめた
薬指にはめられたお揃いのキラキラした指輪
「……………ずっと、はめてやれなくてごめんな」
今度はディーノさんからぎゅ、と握られる
「ずっと、ずっと迷っててすまねぇ…」
「いいんです……責任逃れじゃなくて、逆にとても大事にしてくれてるんだ、って感じてましたから」
申し訳なさそうに笑った後、強い眼差しになり、にぎられてる手に力がこもる
………ありがとうございます
2人の視線を絡めて
少しずつ、少しずつ、距離を近付けて
「…………Ti amo」
誓いの
キス
「ツナ……もう、泣くなって」
無理だ。そんなの無理だ
だって、だって結婚って、好きな人と結ばれて、ずっと一緒にいるためなんですよ
なのに、俺達は違う
いつか離れる時が来るからした結婚
俺達しか知らない
すごくすごく幸せで
すごくすごく悲しい
結婚記念日
この日を絶対忘れない
夕日が射してステンドグラスが俺達に写る
大好きな人の温もりに包み込まれながら俺は泣き続けた
それでも、左手の指輪は俺の…俺達の涙より輝いていた
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あとがき
友人Hの原案を元に書かせていただきました
「二人きりの結婚式」と言うネタからこんなシリアスな話ができました。私もびっくりした←
結婚式がハチャメチャなのは完璧私のせいです。調べてみてもうまくヒットしなくてorzごめんなさい…!!
悲しいディノツナを書いたのは初めてかもしれない……この後がどんな結果であれ幸せになってね…!!←
2010.11.16
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