広いのと狭いのどちらが幸せ?




いつも緊張するこの瞬間


「ボンゴレ、只今帰りました」


今日は……どうやら1人らしい


「………あ、おかえり。ランボ」


目が腫れている


「随分とお疲れの様ですね、ちゃんと休んでいますか?」


「んー……ちょうど獄寺君も山本も遠征に行っちゃってさ。仕事が増えちゃってるんだよ」


そうか…今は、お二人ともいないのか



つまりは



仕事が増えたのではない



仕事を増やしたのだ



「いやぁ、これだけやってるとどれだけ皆に頼ってるかよく分かるね」


苦笑いをするあなた


「────────……」


発しようとして飲み込んだ言葉


『もっと、俺にも頼ってください』


駄目なのだ。これは禁句


只でさえ、俺がここにいることを歓迎してなくて


何より、彼は極端に弱さを見せるのを嫌うのだ


きっとこの言葉は、彼との距離を更に離してしまう


あなたは、そんなに小さな体でどれだけ抱えるおつもりですか


と言っても、『あの2人』がいる間は平気なのだ


3人はずっと一緒だったから…彼がどんなに隠しても分かってしまう。それを理解してから2人には弱さをさらけ出すようになったのを知っている


開けた瞬間に抱き合ってるのを見たこともある


入ったら獄寺氏がいて、寝室からは叫ぶボンゴレと宥める山本氏の声が聞こえたり


2人は、彼の苦しさと寂しさを緩和させることができるのだ


悔しい


悔しい


「多分今夜も終わりそうにないかな」


消えそうだった


このままいなくなってしまうんじゃないか





そう思ったらつい手首を掴んでいた


「…どうした?ランボ」







……………え

どうしたって言われても…
行ってしまう気がして怖くて引き留めただけなのだ。ちゃんとした理由なんて………


「……………あ、あの」


「ん?」


は、恥ずかしすぎるけど…もはやこれしか……!!


「こここ今夜一緒に寝ませんがっ!?いっ……!!」


……………噛んだ

一緒に寝ようと言うのすら激しく恥ずかしいと言うのに最後の最後で思い切り噛んだ


「っ……あっはっはっはっ!!」


大爆笑されてる


「も…ちょ、ランボ……笑わせないでよっ!!っくく、あははっ」


は、恥ずかしい……
存分に笑い転げた後、まだにやつきながらも目を合わせてくれた


「いいよ、今夜は久しぶりに一緒に寝よう」


頭を撫でながら昔と変わらない眼差しで俺を見る


「ランボから言ってくるなんて……向こうで何かあったの?それとも寂しかった??」


完璧に遊んでいる、子供扱いだ。悔しい…!!そりゃ確かに歳の差は10近くだけど……!!


「………何かこんなに笑ったの久し振りだ」


…………俺も、久しぶりに見ました


「疲れただろ?とりあえずお風呂やご飯済ませてこいよ」


口調が昔の俺に言い聞かせるみたいな、諭すような


酷く懐かしい…


「やっぱ仕事場終わらせなきゃいけないからさ。一緒にご飯とかは無理だけどランボが来次第今夜は中断するから」


『俺宿題あるんだよ!!いいから先に風呂入ってこいよ!!出たら30分だけゲームしてやるから』


『………疲れて寝ちゃったか。やっぱまだ子供だよなぁ』


優しい優しいあなた


酷く懐かしい


もうあの頃に戻るのは無理なのかもしれない


だって、俺達だけが普通の世界に戻るなんてできないから


「ランボ?」


「っ、あ、あ、えと……また寝る時に来ます!!」


思わず飛び出した。随分と長い間手を掴んでいた


細くて優しい、でも強いあなたの手


皮肉だ

俺がマフィアでなきゃ、ボンゴレがボス候補でなきゃ俺達は出会うことは無かった

でも、でも彼が彼らしくあったのは…………


「………………っ」


*


「ボンゴレ……」

「ん……?あぁ、もうそんな時間か」


ボンゴレは就寝準備すら惜しんでいたみたいだ。俺が入ってきたことで漸く立ち上がり


「風呂入ってくる。先に寝室で待ってて」


そう言い残して風呂へ行ってしまった。大人しく寝室で待とう


……………ここへ来るのはいつぶりだろうか。ボンゴレがボスになりたてだったときはまだ俺は小さかったからよく行ったものだ


昔の布団より、広くて、一緒に寝ても狭くなくてすごく喜んで、飛び跳ねて


『おっきいな!!ツナ!!!!』


『うん………そうだ、ね…』


あなたは、寂しそうな顔をしていた


(当たり前ですよね…)


「ふぅー……あれ、ランボまだ起きてる??」


またいたずらっ子な顔している。もうあなたが何を思ってるか分かります


「昔は「゙俺が出てきた頃には寝ていたのに゙…でしょ?ボンゴレ」


やってやった!!
一瞬驚いた顔をした後、つまらないとでも言いたげな顔をした


「可愛くない奴!!ほら、寝るよ!!」


拗ねてしまわれた


「ね、ね、ボンゴレ、怒ってます?」


「うるさいよっ」


そっぽ向いてしまった
……………これじゃちょっと


「ね、ボンゴレ、ごめんなさい。ね、ね?」


何がいけないのか分からないがついつい謝ってしまう。惚れた弱味だろうか


「………ボンゴレ」


「ぇ?」


「……………今くらい、さ。昔に戻ろうよ」


そう言って振り向いて


寂しそうな顔で見上げる


「…………っ」


昔に、戻る、てのは


「今だけさ、あの頃に戻ろ。俺の名前を呼びながらしがみついて寝ていた泣き虫ランボ」


………!!


「つ、つつつ、つ……つ…な………」


恥ずかしくて小さな声でしか呼べない。本人の前では本名を呼ばないことで自分の気持ちも抑えている


「……………何も、怖くないぞ」


昔は何かあると、よくここに逃げ込んで、しがみついて、抱き締めてもらって、撫でてもらって、安心しきって寝てしまう


今、俺にしがみついてるのはあなただ


「……………何も、怖くない」


彼が言った言葉を繰り返すように抱き締めた


「はは、何か懐かしい……」


甘えるように身をすりよせる


今だけは、昔に戻ったっていい。誰も咎めない


「………おやすみ」


一言発してすぐ寝息が聞こえる。余程疲れていたのだろう。寂しさも辛さも紛らわす為に仕事を増やして、寝ないで………


でも気付いた
きっと、昔の気持ちに戻してあげられるのは俺なのだ


「………一番じゃなくていいですから、二番じゃなくてもいい、三番でも、四番でも、何番でもいいから」


『たまには俺にも頼ってくださいね』


内緒で額にキスをして、俺も寝始めた




「……………いつの間にか大人になったんだなぁ」


情けないことに俺の癇癪はランボにも何回か見られてるから、ついつい甘えてしまった


甘えるよう仕向けたけど、甘えたのは俺だ


昔はあんなに馬鹿で、うるさくて、しょっちゅう泣いてて


馬鹿で泣き虫なのは変わらないけど、昔よりは全然強くなった。成長してるのが分かる


「………何だか寂しいや」


お前だけは、変わらないでいてほしかったかもしれない


ううん、みんな……みんな、変わらないでほしかった


なんて、無理な願い


「ありがとう、ランボ」


昔よりは狭くなったけど、それでも全然余裕があるベッド


ここが今、俺達がいる世界なんだね



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あとがき

ランボさんは常に片思い←

でもいつまでも子供じゃないんですよ

でもいつまでも歳の差は埋まらないし、元祖2人組が居続けた時間や絆にも勝てないと思うんです

だけど、ランボにしかできないこととかも絶対沢山あると思うんですよ

頑張れランボ!!
それにしてもランツナもパターン化してきているあわわわ


2010.10.20



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