ある夏に起こった出来事。


微ヤンデレ
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ドオォーン……!!


今、俺は夜の校庭から祭りの花火を見ている。別にまたリング争奪戦をするとか、そんなことでは無いのだけれど

なのに何故こんなところにいるのか…今ここにいるのは俺だけでなく、一般生徒も皆いるのだ

最近、妙なことが起こっている。それが、何かと言うと………





「うわあああぁっ!!」

「おい…っ!!またかよっ!!人が消えたぞー!!」

そう、人が消えてしまうのだ。服は残っていて、身体だけが消えていく、何とも奇妙で、何とも恐ろしい話

最初、実を言うと俺が疑われていた。理由は簡単。最初に消えてしまった数人は俺をパシリにしたり、からかったりした人達だったから。疑われるのも仕方がなかった。でも、皮肉なことに゛彼゛が消えてしまい、その日以来俺は疑われなくなった


「……………」

「ん………?」

人が消えた場所に、皆集まっていく中1人ぽつんと立っている影を見付けた。どこか虚ろで、遠くを見ているような、でもどこか悲しい瞳をしている

「クローム」

「…、ボス…」

俺が名前を呼んだことで「はっ」と反応した

クローム髑髏。リング戦の時から、霧の守護者として共に戦ってくれる女の子。骸と入れ替わったりもできるみたいだけど………俺にはよく分からないけど

こうしてみると、彼女は只の女の子にしか見えない。身長は俺より少し小さいだけだけど、やはり骨格等の違いからなのか。俺よりも一回り小さく見える

彼女はあまり表情を出さないタイプであるが、先程から、目が泳ぎ心なしか震えている気がする………いや、当たり前なのだ。いくら、守護者と言え、戦っているとは言え、元は普通の女の子なのだ

「……………!!

ボス………」

俺は、クロームを抱き締めていた

「大丈夫だよ。クロームは俺が絶対守るから」

さっき人が消えたときも、皆に混ざれず、1人で…きっと誰にも頼れなかったのだろう。色んなこと考えてて、この子に俺だけでもいなくちゃ、って思って、何としても守ろうって、震えている彼女を抱き締めながら俺は決意した



翌日、俺達は隣町へ移動することになった。と言うのも、人が消えるなんて被害が起きてるのはここ、並森だけだったからだ。一時的ではあるが安全に越したことは無いのかもしれない

移動はバス。勿論俺達だけではないが、クロームの隣には俺が来るようにした。座ってるところが2人がけでなく4人がけのため、お互い両隣にはまた別の人が座っている

「何かあった時の為に、クロームもこっちにいてもらってたのに結局戻ることになっちゃったね。ごめん」

「ううん、いいの。ボスのせいじゃない」

昨夜からずっと一緒にいたからさすがに落ち着いたみたいで、少し笑顔も見せてくれた


ピュ〜……………ドオォーン!!!!


「あ、また花火がやってる。さすがに夏だから毎日どこかしらで見れるね」






と言った瞬間だった

「きゃああああぁっ!!」

「!?」

っ、何故だ!?
さすがにもう並森から出ている。なのに…なのに、どんどん消えていく…!!俺は、急いで右手でクロームの左手を握った

しかし、そんなことをしたところで止められる訳が無くて…俺が震えてきた。でも、そんなのクロームにバレたら駄目だ。どうしよう…どうすれば……!!


───────花火──────

どこからか声が聞こえた………花火?花火が何か関係しているのか…?




………そうかっ!!


「花火が上がると人が消えるんだ!!事情を話して、中止させよう!!明日からもどこかであるはずだから…」

俺は叫んだ
でも、確証は無く、解決策も極端すぎる。返ってきたのは罵倒の数々

「何言ってんだよ!!花火が原因な訳無いだろ!?」

「人が消える前から花火やってたかもしれないじゃないか!!」

「てか結局これもお前のせいなんだろ!?早く何とかしろよダメツナ!!!!」

確かにそうだ。納得できないだろう。あぁ叫ぶんじゃなかった。更にバス内が混乱してしまっただけだ。馬鹿だな俺。そうだよな、ダメツナだもんな……


「あああああ!!」

「ぎゃあああああ!!」

もう…止められない…何もできない……どんどん、どんどん人が消えていく。そこら中に服だけが増え、人の叫びが少なくなってきた

「………………ごめん」

ぎゅう…っと、力を込めた

「守ってあげられなくてごめん、俺、臆病者でごめん…」

もう、駄目だ。涙が出てきた



──────大丈夫──────


また声が聞こえた気がしたけどもうそれどころで無かった。遂に俺の左隣の人が消えてしまった

次は俺か………諦めかけたときに、あり得ないことが起こった

俺の左隣に気配がする。何故…先程消えてしまったはずなのに……そして、そしてこの感じ…嘘だ嘘だ嘘だ






「…………………っ」

ねぇ………どうして君はここにいるの?ほら、いつもみたいにそうやって、眉間にしわ寄せて、少し困ったように笑って。君が俺に何言おうとしてるか分かってる



゙右腕なんで!!気にしないでください!!゙



なんて、言うんだろ?どんなに近付いても右腕の立場だけは無くさないんだよね。でもね、君のそんなところも大好きだった

袖を引っ張ったら更に困ったような顔したけど、俺はそのまま胸へ飛び込んだ。すると驚きながらいつもみたいに優しく抱き締めてくれた




もうね、全部、全部分かってしまった。もう一度、君に…獄寺君に会えてよかった

(ありがとう、クローム…)

繋ぎ続けていた右手を、握り締めたら彼女は微笑んだ気がした───────…
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「起きて!!クローム!!朝だよ!!」

「…!!お、おはよう!!ごめんなさい、ボス!!私つい…っ!?」

「もう、俺はボスじゃないよ。クローム………いいや、凪」

「………うん、おはよう、綱吉」

私が最初に消したのはボス…綱吉に意地悪をした人達

綱吉をいじめる人も、綱吉を信じない人も私はいらないの

次に骸様。骸様が綱吉に対する執着は乗っ取る為だけでなかった。そこには確かに、何かの感情があった

本当は、あとは綱吉をいじめる人達しか消さないはずだったの。綱吉が笑顔でいてくれればいいと思っていたの

でも私は気付いてしまった

綱吉と愛し合ってた嵐の人。あの人に向ける綱吉の笑顔がとても眩しすぎて……見ていて辛かった。この人がいる限り綱吉のあの笑顔が私に向けられることはない

だから……綱吉を好きな人も、綱吉が信じてる人も、綱吉が好きな人もみんなみんなみんなみんな消したの

醜い最低な女だって思った。嵐の人を消してから、色んな人を消してから初めて綱吉に名前を呼ばれたあの日。怖くて、こんな私を知られるのが怖くて、なのに綱吉は抱き締めてくれた。守ると言ってくれた

最後まで私を守ろうとしてくれていたのにごめんね。辛い思いさせてしまってごめんね。裏切ってごめんね。だから最後に嵐の人の幻覚を出したけれど、すごく後悔したの。これでもう私には振り向いてくれない、って。でも、あなたは私に「ありがとう」と言ってくれた

「……………ありがとう」

「ん?」

「ううん、何でもない」

「そう?あ、今日はいい天気で風が気持ち良くて過ごしやすい日なんだ。散歩に行こうか、凪」

「うんっ、綱吉」

今、ここにいるのは綱吉と私の2人だけ──────────


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あとがき
「という夢を見たんだ。私が」
いや、マジです。8割りくらいこのまんま

ただ、本当は獄寺消えてないし、むしろ左の人がいなくなった瞬間駆け付けてきました。あとクロームが消えない願い歌ってました

これと、主犯をクロームにした以外はほぼそのまんま…最後2人しかいなかったのも本当だし……獄寺にはきゅんした。あの笑顔が何より素敵でした

2010.08.30



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