僕の日常
部屋を出ると廊下に設置された換気扇が物凄い勢いで回転していた。廊下窓の三分の一を占領するそれの所為で窓は完全には閉まらず常に隙間があるため、この階は年がら年中隙間風に晒されている。
風が吹けば、プラスチックの羽まで回るものだから、風量は倍増、寒さも倍増。かといって夏が涼しいのかといえばそうでもなく、築云十年の鉄筋建造物は夏蒸し暑く、冬は極寒という最悪な状態。
冬場は暖房で乗り切れるが、冷房設備のない夏はまさに地獄だろう。まだ夏を越したことはないが、今から夏の時期が憂鬱だ。
ちくしょうやってられるか。
五月も半ばになって何でこんなに寒いんだこの建物は。
内心で毒づきつつ、ペットボトルを手に簡易キッチンに向かう。
右手に十部屋分の扉を見ながらキッチンの前まで来ると、悪臭が鼻をついた。
生ゴミの臭いに一瞬吐き気を覚えるが、平然を装い冷蔵庫を開けた。物が乱雑に突っ込まれた野菜室にペットボトルを入れ、速攻で部屋を出る。
誰だよ昨日の炊事場掃除は。
そう思いつつ部屋に戻ると、隣室の入口に炊事場掃除の札がかかっているのが目に入る。ということは、明日の掃除は自分の部屋の番かと思い憂鬱になる。せめて今日の当番がごみ捨てをしてくれることを祈ろう。

他力本願。
上等。
大好きだ。

そういえば洗濯をしていたことを思いだして洗濯籠を手にする。またあの悪臭漂う場所に行くのかと思うと気が滅入るが背に腹は変えられない。
隙間風吹き荒ぶ廊下に出てスリッパを履く。
他の部屋の住人たちのほとんどは、この時間帯留守だ。ほんの数人しか残っていない。静まり返る廊下を進み、再び生ゴミ臭が立ち込める部屋に足を踏み入れる。
全自動の洗濯機は予想通りに洗濯を終え、静かにそこに佇んでいた。
衣類を籠に入れ、ふと乾燥機の存在を思い出す。半開きの丸扉を開け、そこにスウェットとジャージの下を投げ入れる。他の衣服は籠の中だ。ドラム式乾燥機のスイッチを押し、乾燥を開始する。
以前乾燥機をかけたら、若干衣服が縮んで痛い目に遭ったため、最近では縮まないだろうという物だけを選んで機械に掛けている。これは独断と偏見による選別のため正しいのかわからない。
部屋に戻って洗濯物を干す。二階にテラスがあるが四階からそこまで降りるのは面倒なため、専らが部屋干しだ。
梅雨の時期は一体どうなるのか、あまり考えたくない。
乾燥機が終わるまで一眠りすることにしよう。
目覚時計を一時間後にセットして布団に潜り込む。やはり今日はやけに冷える。
毛布とタオルにくるまって目を閉じる。





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