運命論
これは運命だ。


「はあ?勘違いも甚だしい」
一刀両断。
あろう事か、一世一代決死の大告白は氷刃のように冷たい声音で斬り捨てられしかも鼻先で笑われた。
何たる事だ。
由々しき事態、否、予想通りではあったのだが。
「何で!?」
「何で?んなこたぁ、俺が聞きたい。さっぱり意味が分からない」
「だぁから“君と僕とは運命の赤い糸で結ばれてるに違いない”ってゆう話」
「出会って二日足らずでわかるもんか」
大きく深く溜め息を吐いた双葉は、何がなんでも赤い糸云々を信じる気はないらしい。
むしろ否定したがっている。
そっちがその気なら、俺だって負けちゃいられない。全力で赤い糸説を説いてやろうじゃないか。
「分るから!だからこその赤い糸!!」
「阿呆らしい。お前にはそれが見えるとでも?」
「見えるとも!」
胸を張って答えると、思いきり冷めた目で見返された。
そして凡そ真面目な表情で
「……精神科か眼科をお勧めするぞ」
と一言。
……うん。
なんていうかアレだ。
完ッッ全にひかれた。
見えない壁が双葉との間にある。確実に。
ちくしょう何てこった。
出会って二日目にしてこの距離感。太陽と土星くらいの距離を感じる。
しかも完璧に境界線的なラインテープを貼られた気分だ。無論、心に。
嗚呼全く。
何て無情なんだい双葉くん。
こっちがこんなに悩んでるってのに、君はそうやってケータイなんて弄っちゃって。
そのメールの相手は誰なんだい。
まさか彼女?
……嘘だと言ってくれ。
だとしたらこんなホモ男に告白されてさぞかし気色悪かったろう。
しかしだね、双葉くんよ。
恋愛とは無性別なものだと思うんだよ俺は。
だから俺が君に告白したのもはっきり言って有りなんだ。うん。全く問題ない。むしろ一考すべき事象だ。
有り得ないわけじゃないだろう。何せ戦国大名やら将軍やらは大半が男色まあつまりホモな訳だし。
昔は寛大だった訳だよ。
だからほら、ここはお試し期間のごとくちょっと付き合ってみないか。
「て、訳なんだけど」
どうよ?
「…………今のは全部俺に対する台詞だったのか」
「勿論。他に誰が居るってのさ」
押して駄目なら引いてみろなんて言葉は知らない。
というか、双葉においてそれは厳禁な気がする。引いたら引いたで延々引きっ放しでいつの間にか忘れられてしまいそうだ。「お試しだよ?いいじゃん試すくらい減るもんでもなしに」
ずいと膝を進めて上目遣いに見つめてみる。すると双葉は気まずげに明後日の方向に顔を逸した。
双葉の弱点発見だ。
待つこと数分。双葉がぽつりと呟く。
「……お前さぁ、何で俺なんかに運命感じんの」
不信感いっぱいな口調と声音で問われてぎくりと身を引いた。
無論、わざとでふりなのだけど。
その証拠に自然声が弾む。
「え。何言わせたい?言って欲しいの?恥ずかしいなぁ」
「ならいい」
またしても一言。
こんちくしょうが。今に見てろ可愛い双葉ちゃん。
放送禁止用語をふんだんに使うような目に遭わせることが最終目的になった。しかも今ここで決定。
「俺さぁ眼鏡萌えなの。つぅかフェチ?なんていうかストライクゾーンど真ん中みたいな」
沈黙。沈黙。沈黙。沈黙。
視線が痛い。
眼前の双葉は顔色をなくして絶対零度の双眸を向けた。
「…………絶ッ対嫌だ。死ね変態」
見事な低音プラス南極に吹く北風並みの冷たい声。身体全部で軽蔑のオーラを放っている。
心が血の涙を流している気がするけど、まぁそれは気の所為だろう。うん。ほんと。

嗚呼、なんか…折れそう。








難攻不落な眼鏡の彼




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