下剋上
細い首に手をかけた。
両の手にゆっくりと力を加える。いとも容易く捕らえた首は、回した左右の指先が触れるほど細い。
あと少し指先に力を込めれば、呆気なく折れてしまいそうな其の首の持ち主は、涙目で口を開閉している。
まるで酸素を求める金魚のようだと場違いな想像に苦笑する。
掌から指先に徐々に力を込めれば、白い牙が覗く唇が苦しげに息を吐いた。
戯れにほんの少し力を緩めてやれば、喘ぐように気管を鳴らす。
酸素を取り込んだ身体がぴくりと震え、鋭い双眸がこちらを見た。
虹彩が赤く縁取られた金色の瞳にぞくりと背筋が震える。いっそ殺せと訴えているのが手に取るようにわかった。
誇り高い黄金色は、捕食者である自身を捨てることはないのだろう。
今にも息絶えそうなほど弱っているにも関わらず、その眼光は衰えることを知らない。剥製になろうが、解体されようがこの眼の色が褪せることはないのだと思うと、この手に捕まえておきたいと思う気持ちが否応にも高まるのである。
その黄金色に微笑んで指先に力を込めた。酷く滑稽な音が響いて、そこには底なしの沼を思わせる瞳だけが残る。


望み通り殺して、剥製にして飾ってあげる。




肉食動物をころすのはほんらい喰われるはずのよわい草食動物だということをしっているひとがどれだけいるでしょう





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