花色ロジック

噎せ返るような酷く甘い、




とうとう頭が沸いてしまったらしい。
眼前で一心不乱に花を喰う彼を見つめ、高頼は内心で思った。
両手に鷲掴んだ色彩鮮やかな花々を口一杯に頬張る。あくまで無表情のまま、真剣そのものといった風情で咀嚼している。口の端から緑色の茎が飛び出して、まるで一種のホラーのようだ。
マンダリンオレンジの色をした花弁が辺りに散っている。その所々には、未だ手をつけていない花のロイヤルブルーが寂しげに転がっていた。
何をしているのかと問えば、花を喰っている。と、そのままの返答に頭痛を感じた。
「そうじゃなくて、どうしてそんなものを喰っているんだ?」
「……大凡、僕の考えを理解してくれる人は居ない」
「言ってみなけりゃわからないだろう」
促せば、ゆるゆると顔を上げて彼はこちらを見た。花粉の付いた唇を手の甲で拭って彼は淡々と言ってのける。
「罪悪感から逃げるため」
「……もう少し、詳しく」
先刻言った手前、訳が分からないとは口が裂けても言えないため、説明を求めるだけに留める。
すると彼は肩を竦めて、指先についた花弁を舌に乗せた。赤い舌の上の青い花弁は、酷く滑稽に見える。
「僕は何千人と人を殺している。まるで、罪の塊だ。汚れて壊れて腐敗しているとしか言いようがない」
「それは、俺もだ」
「そう。この盤上の上でそうでない人間なんて居ないに等しいだろ?」
くるりと茎を持って回して、彼は高頼を見つめた。平時、引き金を引く白い指が今は有機的な生き物を摘んでいるのは珍しいことだ。
違和感を覚える。その花の命すら彼が握っているのであって、愛でようという気はさらさらないのだ。
「いっそ内から洗浄して浄化してくれればいい。そうしたら、ほんの少しでもこの罪は薄れてくれると思った」
「……本気で?」
「絵空事だと思われようと、縋ってみずにはいられない。自身の浄化、洗浄、救済。信憑性のなさですら僕の縋る対象だ」
まあ、高頼さんには到底分からないでしょうけれど。と、小さく呟いて食事を再開する彼の姿にただ立ち尽くすしかなかったのは言うまでもない。







色鮮やかな懺悔








それはあまりにも滑稽でいて切実な色をしていた






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