葬送
ついに彼は行ってしまった。純真無垢な白を纏い白菊に埋もれて。もう二度と戻って来ることはない。心臓は停止した。かくいう自身の心臓もいつ止まってもおかしくはないほど鈍麻している。





葬列参加者は沈痛な面持ちで柩の彼に別れを告げる。高頼が高山が泣いた。あちこちで啜り泣く声が聞こえる。誰かが腕を引いた。まるで操り人形のように導かれるまま柩に近寄る。途端、緩慢に動いていた心臓が驚くほど高鳴った。突如激しく血液が循環し始めた身体に動揺しつつ柩を覗き込めば、白を纏った彼がいる。
ただ一向眠り続ける彼の姿に心臓がひりひりと痛んだ。火傷に似た傷の痛みに胸が締め付けられる。胸の上で組まれた両手の白さに言葉を失くした。その顔はあくまで穏やかで苦痛など微塵も感じさせない。しかし彼の身体を銃弾が貫通したのは紛れもない事実であり、その時の苦痛も確かに在った筈である。
しかしながら彼は生前と変わらぬ穏やかな表情でそこに在る。すでに人ではなくなった空っぽの肉塊が彼であると思うと、その呆気なさに目眩を覚えた。
ふらつく身体を誰かが支えた。この手が誰のものか未だ判然としないがそんなことはどうでもいい。
手を伸ばせば触れることが可能な位置であるにも関わらず、彼がそこに居ないという事実に茫然とした。これが永遠の別れであると漸く実感した途端涙が頬を濡らした。
支える手に縋りつき声を殺すことも忘れて泣いた。
こんな時自身の無力を知る。滂沱の涙と哀しみのうちに彼との別れは終わり、遠く去り逝く彼の幻にとうに涸れた筈の涙が再び溢れ出した。
馬鹿だったのは自分なのだと今更のように実感する。
いつも気付くことが遅い鈍感なこの身を誰かが壊してくれはしないかと今日もまた戦場に向かう。
こんな僕を貴方は愛してくれていただろうか。






good-bye darling.
((心の底から愛していたよ))







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