俺のこと好き?
熟して腐りかけたトマトみたいな夕日を背に、先程双葉が口にした科白を頭の中で反芻する。
馬鹿みたいに、幾度も脳内をぐるぐると巡る言葉を噛みしめていると、追い討ちをかけるように双葉が科白を続けた。

「友情と愛情は違うんだ」

分かってるだろそれくらい、と呟いて双葉は俯いた。
それは何か。
俺が双葉を好きというのは、友情の延長であり友愛で、伝える言葉すら勘違いからなせるものだと。
そう言いたいのか。
黙り込んだ俺をちらりと見やって、双葉は小さく息を吐いた。
ああ、やっぱり。とか、そういう色を含んだ吐息。
それは酷く冷めていて、一瞬熱に浮かされた脳を醒ますには充分な温度をしていた。
どうしてそこまで他人の意思を否定できる。俺は双葉が好きで、好きで好きでたまらなくて、他の奴と一緒にいるのだって見たくないのに。

「俺が双葉を好きなのは、そういう好きじゃない」
「わかってないだけだ」
「友達とキスしたいだとかセックスしたいと思うか?普通の奴らには思わない。双葉だから思うんだよ」
「……訳が分からない」
「双葉ッ」

熟したトマト。まるで、どろりと零れるように地平線に沈みかけたその光の逆光で双葉の表情はよく見えない。
握りしめた拳を額に当てて、何事か考えるように顔を逸らした双葉にかける言葉も見つからず黙り込んだ。
熟れた朱に、伸びた影が揺蕩い押し潰される。飽和状態の沈黙の中、呼吸も忘れて立ち尽くした。




飽和状態の朱に呑まれる




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