「……。」
なにか話さなくちゃ、そう思っても、話す言葉が見つからない。どれも色をなくした灰色の言葉で、口からでても死んでいる。
「なあ、」
海色の瞳がくるりと動いて、俺を捉える。冷たい彼の手を頬に押しあてて、返事をする。
「ん?」
「俺、一番長生きしたんだ。3人の中で。3倍くらいだな。俺を造ったヤツらが驚いてた。十五年だぜ。」
十五年。彼はこないだ十五になったばかりだと言っていた。俺と同い年の、きれいな男の子。
たんたんと指の腹で俺の頬を弾ませる。嬉々とした声音と、表情だった。
「十五年目におまえと会えてよかった。」
「まだそんなこと言わないで、でも、俺も嬉しいよ。」
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「俺、その子のこと、愛せないかもしれないよ。」
「それでいい」
また新しい俺が生まれて、もう一度おまえと出会うかも知れないな。なんて言葉にした。
あんな真剣な顔で返されるとは思わなかった。
また会いたい、会えるよねって言うだろうと思っていた。
「その子も、君なの。」
「俺は、俺だ。でも、次に生まれる俺も、俺のはずだ」
そっか、けどね、
その言葉の続きは知らない。
電池が切れたかのように意識が飛ぶ。眠ってしまったんだ。起きたら千石が隣にいて、おはようって笑っていた。
ああ、死にたくない。幸せだ。
「だって俺は、今目の前にいる跡部くんが好きで愛してるのに。新しい君は俺のことを知らないんでしょう?それって、浮気になっちゃうから。」