社会人千石×アンドロイド跡部


俺と同時期に製造、販売された同じ型番の機人が、騒ぎを起こしたようだった。


詳しいことはしらなかった。千石が、なにも言わないから。けれどたまたまあいつがいない日に見たニュースでは、同じ機人を一斉に回収し、廃棄にすると決まったと流れていた。

人が、死んだらしい。

そんなことがあっては、このような措置がとられても仕方ないだろうと、妙に納得している自分がいた。食い入るように眺めた視線。後ろに、千石が立っていたことにも気づかなかった。


「いやだよ。」

「千石、」

「だめ、絶対行かせない。そんなこと、させない。」


強い眼差しは俺を貫いた。リモコンが奪われ画面が暗闇に変わる。のをただぼんやりとみていた。

少なからず情報を処理するのに時間がかかっているようだった。だから、動作が遅い。千石がしゃがみこみ俺を抱き締めても、固まった腕は動かなかった。


「君が行くって言っても絶対に行かせない。」


耳元で話される言葉は先程よりも鋭さを孕み重く響く。


「イイコの跡部くんは、俺の言うことが聞けるでしょ?」


ずるい。普段は、命令することを嫌い俺を対等にいさせようとするのに。主人の命令は逆らえない。それは俺たち機人がいちばん最初に打ち込まれるプログラム。


「俺は、居心地のいいここから出ていきたくない。」

「うん、」

「廃棄処分なんて、怖い。出荷されるときに一度見た。粉々に押し潰されて燃やされるんだ。強制終了すらさせてくれずに。」


あの光景がデータに焼かれて消えてくれない。


「行かなくていいよ。」


俺に甘い世界は優しくて残酷だ。廃棄に協力しない所有者は厳重処分の対象になる。ループを続けるニュースはそう言っていた。


だから、


「人形が自分の意思を持っては、いけない。」


抱き締める千石の腕をそっと引き剥がした。







せんべ「(首を振って)人形が自分の意思を持っては、いけないんです」


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