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演技とか、歌とか、ミュージカルに関わるものは全て輝いて見えた。細かい動作の一つ一つが素晴らしかった。

何も無い私が、唯一求めたもの。



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美風藍。その人がどんな人なのかなんて、すごく知ってる。液晶画面越しに見た憧れの存在だから。
沢山の人に必要とされ、慕われ、愛され、とても心が綺麗な人。無いはずの心を感じ、歌を愛していた人。
私はそう感じた。あんな人になりたいと思った。でもそんなこと思うだけ無駄で…。

私が気付いたらもう、そこにあるのは高校生だった自分の手ではなく、小さい小さい、小学生ぐらいの大きさの手。
最初は困惑した。でも、

―――あぁ、そうか。

瞬間頭に浮かぶ映像。最後はどうなったのか、分からなかったけど。私は生まれ代わったのだと分かった。


なりたくて堪らなかった、美風藍に。



体はロボットだったのだけど、どうやら年月を重ねる毎にメンテナンスで成長に近い行程で体を大きくするらしい。私は人間だった頃のこともあるので、出来るだけ人に近くなれるのは嬉しかった。

美風藍に成り切ることも簡単だった。


***


小さい頃から博士と共に住んでいる、二人が住むには大きすぎるこの家は、白を基調とした部屋が多い。その部屋の一つに図書館かと突っ込みたくなるぐらい広く、本の量も多い書斎があるのだけど、そこには音楽についての本ももちろんあるわけで。

小さい頃から此処で音楽について勉強をしていた。私は歌が好きなだけで知識については無に等しかったから。

ガタンッ

高いところの本を取るために、木でできた脚立に登り本に手を伸ばす。すると、丁度そこに挟んであったのか、数枚の紙が全て散ってしまった。慌てた私は足を滑らせ、脚立から落ちてしまった。

ドンッ!!

「いっ………!」

この体は本当によくできた物で、痛覚もなぜか感じることが出来る。何故出来るのか謎だけど。

「完璧には、ほど遠い…なぁ。」

呟きながら散らばってしまった紙を取る。私が見た美風藍は完璧だった。でも私は失敗ばかり。
最初は嬉しかった。必要とされる存在になれた事が。でも、必要なのは“私”じゃない。


何故私がいるのか分からない。

何故藍じゃなかったの?

頭がぐちゃぐちゃになる。気持ち悪い。

どうやらばらまいてしまった紙は楽譜のようで、それも私がかいた……。

「………。」
何で、私は生きてしまったのだろう。


「いい気味よ。」



ぐしゃり、持っていた手書きの楽譜を握りしめる。



  いっそ消えてしまえたら
   どれだけいいか。



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