可愛い可愛い俺のシズちゃん。
耳を真っ赤に染めて飛び出すなんて、ああ本当に君は初で可愛いね。

「あの…臨也さん」

ふと遠慮がちにシズちゃんの友人は俺に話しかけた。

「なんだい?」

覚悟を決めたようなその表情に、俺はああ今夜はシズちゃんに何を食べさせてあげようかなと思案する。
だって興味がない。
俺の可愛いシズちゃんの友人でなかったら、俺はとっくに相手などせずシズちゃんを追いかけていたのだから。
だからこうして聞いてあげる俺に是非感謝してもらいたい。

「…部外者の私が言うのもあれですけど、弟さん、甘やかし過ぎだと僕は思います」

彼が言わんとしている事など聞かずともわかった。
なぜなら彼は、俺達兄弟を古くから見てきた唯一の存在でもあるからだ。
つまりこうだろう?
本気でもないのに、弟が向ける歪んだ愛情見たさに女遊びをするのはやめろ。

ああ!実にくだらない!

「いくら正当防衛だからって、ボールペンを刺すだなんて怖い女だよね。それに気付かせてくれたシズちゃんに俺は感謝しなきゃなぁ」
「…え、」

間抜けに開いたその口に、俺は何故だが無性に苛立ちを覚えた。
けれどそんなものは少しも顔に出すことはしない。
なぜなら彼は可愛いシズちゃんの友人なのだから。
だから俺はこうして綺麗に笑顔を貼り付けて、シズちゃんが置いていったままの鞄を拾い上げた。
そうだ、今夜はカレーにしよう。

「じゃあ俺はこれで。あ、これ治療代ね。好きな物でも買うといいよ」

何かまだ言いたげにする彼の胸ポケットに、俺は手早く諭吉をねじ込む。

「じゃあまたね?」

そうして足取りも軽やかにシズちゃんの後を追うのだった。
ああなんて無駄な時間を過ごしてしまったのだろう。
早くシズちゃんと話したい。


「ごめんね?またせたちゃった?」

下駄箱に凭れかかるシズちゃんは、夕日に染まり綺麗だった。
さすが俺の弟。
俺の大事な弟。
可愛い弟。

「………行くぞ」

こちらを振り返ることなく、シズちゃんは歩き出す。
いつからだろうか。
俺に向けるその背中が随分と逞しくなってしまったのは。

「シズちゃん待ってよ」

俺は知っていた。
シズちゃんが俺に近付く人間に、次から次へと大嫌いな暴力を行使していることを。

俺はそんなシズちゃんの可愛い行動を、大袈裟にならないようにそっと手助けをする。
可愛い可愛い弟の、小さな嫉妬を受け止めるのが兄としての俺の務めだと考えいるからだ。

「シズちゃん、今日はカレーにしようか?」

一生懸命、俺を嫌いなふりをするシズちゃん。

「………好きにしろ」

一生懸命、考えないようにしているシズちゃん。


でもね、シズちゃん
俺、知ってるんだよ?
君は毎晩、
俺のことを――――――










ねぇ?









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