トモダチですから

お試しオトモダチこと津軽が来て、気付けば今日で4日が経った。
初日こそは自分の家に自分ではない誰かがいるという状況に違和感を覚えたものだが、どうやら俺は順応性が高かったらしい。
なにせ日課となりつつある花札やらけん玉やら将棋といった時代を感じさせる遊びにはお陰さまで馴れてしまった。しかも俺は器用な人間だったので、遊び方を教えてくれる津軽にあっさり勝ってしまう位である。
そして昨日などは遂に風呂に一緒に入るという偉業まで成し遂げたのだからもう怖いものなどないだろう。

そう――だから今、こうして目の前で正座をし、耳掻きを片手に手招きするオトモダチに俺は動じたなどりしないのだ。
いいか、落ち着け。
落ち着くんだ折原臨也。

「どうして、耳掻きなのかな?」

引き攣りそうな顔をなんとか笑顔の下にしまい俺は問う。
大丈夫、この3日で俺はオトモダチの突拍子のさに耐性がついた。
そう、耐性が。ここ重要。

「俺の趣味だ」
「趣味?へぇ…それはまた随分な悪趣味だ」
「…す、すまない…」

つい本音を口にしてしまえば、無表情かつ割りとぼんやりとしがちな津軽の顔が、途端に曇り俺は内心大いに焦る。
なぜってこの津軽、図体ばかりがデカいだけのガラスのハートの持ち主なのは初日で確認済みだ。かといってここで俺が絆されるのは間違いの、筈。そう、それは違う。

「…変なことを言ってすまなかった」
「あ、ああうん」

わかりやすくしょんぼりとするその様が、常ならば刺激などされない庇護欲が妙に刺激される。
きっと、いや確実に俺は間違っていない筈なのに、しまいにはこの俺が何故だが罪悪感まで抱いてしまうのだから津軽という男は侮れない。
ああくそ…実によくない。実によくない傾向だ。

「津軽」
「…なんだ?」

依然こちらへ背を向けたままの津軽を横目に、俺は今日の予定を携帯でざっと確認する。そうして迅速に調整のメールを数通送信。うん完了。

「今から出掛けようよ」
「、俺と?」

顔を上げた津軽は、まるで問答無用で人を風呂場まで引き摺った奴と同一人物と思えない位に落ち込んだままだ。全くあの強気はどこにいったんだと笑いたくなる。

「生憎俺は君の趣味には付き合ってあげれないけど、でもほら俺も言い方が悪かった。その証拠に俺は君を傷付けてしまっただろ?だからお詫びにさ、気分転換に一緒に出掛けない?」
「え、あ、」

俺からの提案に、驚きからか僅かに頬を紅潮させた津軽に何故だか胸の辺りがくすぐったくなる。

「ありがとう、臨也」
「っ、トモダチは労るものだからね」
「ああ、そうだな」

それから自分のらしくないそのの行動に気付くまで、あと1分と37秒。




づく…?





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