家に帰ると見たこともないガキが両手を広げて俺を出迎えた。

「やぁお帰り。うわぁ本当にスーツ真っ白なんだね?悪趣味だなぁ、悪趣味だなぁ!ねぇそれ着てて恥ずかしくないの?」

バタン

一瞬帰る家を間違えたのかと思い慌ててドアを閉めて表札を確認する。
『420号室』
確かに…俺んちだ。表札に名前を入れてないけれど間違いなく俺の借りている部屋だ。ていうか今鍵開けたし。
ああでも…うんもしかしたら今日は飲み過ぎてしまったのかもしれない。ユミちゃんてばシャンパンタワーまでしてくれちゃったからなぁ。
そうだあれは目の錯覚…いや幻しだ。だって俺最近頑張っちゃってるもん。
うんうんそうだ。絶対そうだ。
そうして俺は気を取り直してもう一度ドアノブを回す。

「なにしてんの?俺お腹空いたんだけど。フレンチトーストでいいからさっさと作ってよ」
「…………………ドチラサマ、デスカ」

そこにはやはりガキが。小学生ぐらいのガキが…確かに…確かにいらっしゃっる。
……………ナニコレ?
まさか新手のドッキリ?
固まる俺にガキんちょは遠慮なく不躾な目線を飛ばしてくださるのだから腹立たしい。

「うん?ああ…俺?」

ガキんちょがわざとらしく首を傾げて目を細めた。間違いなく一回りは年上の俺に一丁前にガンくれるとは何事だコラと睨み返してやろうにも情けないかな、ぎくりと嫌な汗が背を伝う。
だって俺…え?まさか孕ませちゃってたとかそういう?わけ?え?
でもこのガキどう見ても小学生くらいだし…ってことはまだ俺が学生の頃の…とか?
そう思った途端おうちで食べてねハートなんてメッセージカード付きの可愛らしいピンクの箱が床に転がった。俺が無類の甘いもの好きと聞いて折角サオリちゃんが苦労して買ってきてた有名パティシエのケーキだったけれど、俺は今どうしようもない脱力感に襲われてしまったのだから仕方ない。

『デリックさん今週マジでツイてないらしいっすよ!恋愛運とか要注意らしいんで気を付けてくださいね〜』

ふと先日、後輩のリンダくんこと正臣くんに言われたことを思い出す。
そっかそっか…
ああ――俺やらかしちゃったんだ。
認知…そか、しなきゃ…

「やめてよ、俺と君に血の繋がりがあるとか胸糞悪すぎるから」
「…へ?」

心の中を読まれたのかと唖然として見れば、ガキんちょはそれはそれは子供とは思えない人の悪い笑みを浮かべていた。
見れば彼は真っ白なスーツに身を包んだ俺とは対照的に髪は勿論のこと、真っな黒なファー付きのコートにこれまた真っ黒な半ズボン、そして真っ黒なハイッソクスを身に纏っている。
ただ唯一子供らしく覗いた膝小僧が余りにも真っ白で、ひどく目についた。

「俺の名前は折原臨也。聞いたことは…まぁないかな?デリック…いやヘイワジマシズオさん」
「ハ?な、んで名前を…つか、え?ええ?」

正直なところどうやって部屋に入ったんだとか何が目的なんだとかそもそも何者なんだとか諸々。聞きたいことやら混乱やらで言葉に詰まる俺に目を細めたオリハライザヤくんは、盛大にわざとらしく溜め息を吐くと取って付けたような笑顔で答えた。

「だって俺は素敵で無敵な情報屋さんだからねぇ」

玄関に置かれたデジタル時計は朝の8時を表示している。
俺…今日オフにしちゃダメだろうか…?







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -