0-3
瓦礫が崩れる音がした。
彼女が指を1本動かすだけでどこかしら爆発をする。
僕と里香ちゃんはそれをただ見つめた。
今の僕が入っても邪魔にしかならないとわかっていたから。
「 …納粹さん… 」
少しだけ、彼女がこの戦いで死ぬんじゃないかと不安に思う。
『 なんで…どうして…! 』
「 なんで? どうして? 最初から言ってるだろう? 私は呪術界の未来の為に、と 」
『 だからって皆を……悟を傷つけていい理由にはならないだ…ろッ! 』
彼女が使う待雪草≠フ制御はとても難しい、と昔悟から聞いた。
魂が揺れていると狙いは定まらないと言うから、定まったらどうなると問えば迎えるのは死だと。
空気中の呪力を自分の溜め込んだ呪力で染め上げそして爆発させる。これは胎内の呪力も同様に染めることができる…らしいが。
「 狙いが定まっていないな? 私を殺すならもうとうの昔に爆発してるはずだ 」
『 …うるっさいなァ…! 』
ふと思い浮かんだ。
菫は最初から高専にいなかった、ということは
誰かと共にいたということになる。
もしもその誰かが悟の場合彼女は何かしらの約束をしたのではないだろうか。
「 悟との
約束が邪魔をしているんじゃないのかい? 困ったものだなぁ…相変わらずそこまで過保護だなんて 」
『 ~ッ!!
悟を悪く言うなッ! 』
「 …菫も菫で、か 」
彼女が右手の中指を曲げた途端に私のすぐ右側が爆発する。さっきよりも狙いは定まっているおかげか頬を少しやられた。
久しぶりにもう少し遊んでやりたいがもう潮時だろう。
そろそろ…呪いの女王と遊びたいものだ。
「 菫 」
『 、すぐる、く… 』
「 相変わらず頭に血が上ると攻撃が短調的になるのは悪いところだ 」
『 ぁ… 』
「 ……救ってあげれなくてごめん 」
皆は知らない呪霊の味をこの少女は知っている。あの吐瀉物を処理した雑巾を丸飲みしている様な味を。それを
非術師の為に取り込み使いまた取り込む。
昔は自分や術師と楽しそうに笑っていた菫の笑顔は知らない間に非術師の為に微笑む顔になっていた。
「 さて、お待たせ乙骨憂太。君の番だ 」
「 …その手を離せ。納粹さんを抱えるその手を…! 」
「 君が私に勝てたら離してあげよう 」
「
ブッ殺してやる 」
今度こそ必ず助けてあげるから。
君がまたあの時のように笑えるように。
20201213
正直迷った。
「 救ってあげれなくてごめん 」にするか「 君を殺したのは悟だよ 」にするか。
五条との約束で待雪草の本来の力が出し切れなかったわけだからなぁ…
でも五条も五条できっと菫ちゃんを救いたいわけだから…