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この日僕は黒い天使を見た。
夏油傑と名乗る人物が呪術高専に侵入して僕を勧誘し 非術師を皆殺しにして 呪術師だけの世界を作る≠ニ語り 百鬼夜行 とやらを行うと言った。
そして呪霊を投下し去った直後に、音も立てず爪先からゆっくりと着地した女の子。
真希さんよりも華奢だがナニカ忌々しいモノを彼女から感じた。
すれ違った夏油傑が呟いた言葉を少しだけ脳内で再生する。
「
まだ生きていたか、呪胎九相図の紛い者よ 」
その後は凄かったとしか言いようがない。
彼女はたった一言の言葉を放ち片手を頭上で握り締めただけで夏油傑が放った呪霊達は一掃されたのだ。
『 ……美味しくない、 』
「 菫ッ! 」
「 しゃけ 」
「 相変わらず一瞬で終わっちゃうねぇ 」
僕以外の1年生が彼女を囲う。
どうやらあの女の子も僕と同じ高専の子の様だ。
なんて話しかけたらいいんだろう、こんな時里香ちゃんならなんて声をかけただろう。
はじめまして≠ネのか僕も1年生になったんだ、よろしく≠ニかなのか。
『 ………貴方だぁれ。悟君や皆の気配がしたから呪力を奪わなかったけど 』
「 ぼ、僕、僕は乙骨憂太っていいます! 1年生です! 」
『 いち…ねん…………転校生だぁ! 』
途端にキラキラとした目になった女の子は小走りで駆け寄ってくると僕では無く里香ちゃんの手を握る。
皆唖然とした、勿論僕自身も、きっと里香ちゃんも。
『 私、納粹菫! キミと同じ1年生なんだぁ 』
「 えぇっ!? 同い歳!? っていうか里香ちゃん… 」
『 この子里香ちゃんって言うの? よろしくね、里香ちゃん! 』
天使だと思ったのは最初だけで話すうちによくわからない人って印象がついた。
パンダ君曰く、同級生が増えて嬉しいのと
良い呪霊を見れて気分が上がってるらしい。
『 私? 私はねぇ、棘ちゃんより1つ上。準1級なの 』
「 準1級… 」
『 ……悟君から話は聞いたから、少しだけ話すね、私のこと 』
一方的に情報知ってるって、嫌いなの。
困った顔で納粹さんはそう言って『 里香ちゃんも聞いて 』と呪力を抑えてもらい3人で夜の屋根に登り月を見ながら話を聞いた。
『 私特級呪霊と特級呪術師の間に産まれた忌み子でね 』
「 それって、人間じゃないってこと…? 」
『 うーん、難しい! 形は人間、生きててやってる事も人間。でも…食事は両方 』
「 両方 」
『 うん。人間の食事でお腹は膨れる。しかーし、呪力を食事とする事も可能なのだぁ 』
あぁ、だから彼女はあの時に美味しくない≠ニ言葉を吐いたのか。
やっと1つの疑問か解決したと思うと里香ちゃんが口を開く。
「
菫 つらい? 」
『 …最初だけ。牢に閉じ込められたり殺されそうになった時は本当につらかったけど…今は皆がいてくれるから、平気だよ 』
納粹さんはそう言うと里香ちゃんを優しく撫でて怒りを沈めていた。僕以外に心を許すなんて珍しいと思ったけれどでも死んでしまった彼女に友人が出来たことが何よりも嬉しかった。
『 傑くん、どうして、 』
うそつき
膝を抱えて小さく縮こまり呟かれた言葉に僕は返事が出来なかった。