09
真っ暗な世界で声が聞こえた。
「 すぐに助けるから 」
安心できる声
昔から知ってる
私と彼女の大切な─────
『 め…ぐみ… 』
薄らと目を開けた視界に入ったのは自室の天井。
安心するはずの自室に覚えのない匂いが鼻をかすめる。
『 なにこれ…花…? 』
布団に散りばめられた花の呪力を辿ると沢山の友人の呪力を感じた。
花に詳しいわけではないのだけれど確かこの匂い、この花は、
『 ラベンダー…? 』
にしても何故皆が皆、ラベンダーを持ってきたんだろうか。
端末に指を滑らせ検索をすると視界が滲み出す。
私は宿儺と向き合った時にやってはいけないことをやったのに、どうして皆こうして私を救おうとしてくれるんだろう。
「 菫ッ 」
いつの間にか私の目の前にいる悟君。
珍しくトレードマークの目隠しはしておらずサングラスもしていない。
そんな彼の綺麗な瞳からはポロッと大粒の涙が溢れだしている。
「 よかった、ほんとに、 」
私は自分が生きているということよりも彼が泣いている事に驚きを隠せない。
だって傑君の時も、理子ちゃんの時も、彼が泣くことはなかったじゃないか。
『 …ごめんなさい 』
沢山心配かけて。
見た目や呪力ばかり成長して肝心な心は成長しなくてごめんなさい。
「 んーん、謝らないで。それより後で恵にも会ってあげて。1番心配しているのは恵だからさ 」
『
恵ちゃん……そうだ、悠仁ちゃんは!? 宿儺に身体乗っ取られてそれで、 』
「 ……… 」
『 ………うそ、でしょ…? 私の…せい? 私が宿儺を止めれなかったから!? 』
「 ちがう! 菫のせいじゃ、『
違わない! 私、あの時、確かに、立浪草≠使おうとしたの! 本当に、使おうとしたわ、私、 』…たつ、なみそ…って… 」
1輪のラベンダーを胸元で握り締める。
鼻に通る香りがしたけれど今の私はそれどころでは無い。
あの瞬間立浪草≠宿儺に使おうとした、アレなら最小限の犠牲で宿儺を消せるはずだったから。
けれど触れた途端突然の頭が痛み始め何も出来なかったのだ。
「 …立浪草を使うことが最前だった…わけ、か 」
『 意味なかったけれど 』
あの時宿儺は私に何をしたんだ?
呪力の無効化…違う、手には確かに自分で解いた感覚が残っているから。
考えたくはないけれど私の呪霊の部分が拒絶したとも有り得なくはない。
その反動で2日眠る羽目になったのかもしれないとなると。
私は、もう彼等とは、
「 気づいていると思うけど、間違いなく上層部≠ェ関係している 」
『 ………遠回しはやめて。悟君が殺せって言うなら殺せるよ、 』
誰であろうと、私は殺れる。
私の命は貴方の為にあるんだから。
20210221
週刊誌がつらい。
てかラベンダーってめちゃくちゃ匂いキツイ。
[ 立浪草-タツナミソウ- ]
花言葉 : 私の命を捧げます から
発動者の«閲覧不可»及び«閲覧不可»を犠牲に対象の呪霊及び人物を«閲覧不可»。
但し納粹菫が過去に使用した際に何らかの不祥事が起きた模様。
仮にこの不祥事が再度起きた場合納粹菫の«閲覧不可»を許可する。