トリカブト | ナノ

07



扉を開けると思わず目を見開いた。
連なるパイプ管や建物、かなりデカい生得領域だ。
後ろに目をやるとそこは既にパイプ管で埋められている。


『 …特級か 』


右手で僅かに感じる呪力を辿っていく。
悠仁もそれなりに弱っているが近くに特級呪霊のであろう呪力も感じる。
離れた所に野薔薇の弱りきった呪力も感じるけれど恵が近づいている。


『 …んー…行くか 』


悠仁の所に辿り着くまでに恵に会えたらいいんだけれど。
まぁ会えなくても潔高ちゃんがなんとか言ってくれるでしょう。
にしてもこの生得領域道覚えづらいなぁ。
似たような場所ばかりだから自分で印を貼っとかないと迷子になりそうだ。


「 菫さん!? 」

『 恵! 野薔薇は大丈夫!? 』

「 なんとか。それよりなんでここに… 」

『 それはあと。早く出口に行って。私は悠仁のところに行くから 』

「 ~ッ、ダメです! アイツ俺と釘崎が出口から出たら宿儺を出すつもりなんで、 」



『 は? 』



宿儺を出す? それって代わるって意味でしょ。
ダメよそんなの許すわけが無い、許されるわけが無い。


『 …大丈夫だから、行って 』

「 でも! 」

『 確かに宿儺に勝てる自信なんてないし時間稼ぎが精一杯。でも…大丈夫だから 』

「 ………怪我したら許さねーから 」

『 ん 』


掴まれていた腕を離され互いに反対方向へと走って行く。
多分もうアッチは出口がすぐそこだからきっと宿儺の出現は間に合わないだろう。
せめて、せめて、時間を稼げたら─────
私の焦りと同時に玉犬の遠吠えが聞こえた。





『 っ、ははっ… 』


悠仁の呪力が知らない呪力に変わった途端息が苦しくなると同時に乾いた笑いが出た。
あぁ、だから嫌だったんだ、呪術師になんてなるのは。
あの日から10年も生きる予定なんてなかった。
悟がこれ以上泣くのは嫌だったからさっさと殺してくれと何度願ったことか。


「 ほう…オマエが納粹菫か 」

『 …ゆーじ…じゃないな、アンタが両面宿儺か 』

「 如何にも 」


震える身体を抱きしめ目の前に佇む両面宿儺に目をやる。
呪力は覚えた、いつでも掌握できる…が、流石は呪いの王。
今の私・・・とは力の桁が違う。死を犠牲にするなら、まだやれなくはないけれど。


『 …私の前に現れてくれちゃ、恵達の所に行かせる訳にはいかないなー 』

「 ケヒッ、その震える身体で何ができる? 」

『 …ハッ、バカにすんなよ、呪霊が 』


立ち上がってタイツについた埃を払う。
私が嫌いなものその1 仲間に怪我をさせるヤツ、その2 仲間を泣かせるヤツ、その3 あの人達が愛してくれた私をバカにするヤツ


ごめんね、恵


約束は守れそうにないや。


「 っ…貴様その呪力…!? 」


最後に両面宿儺が何か言った気がするけれどもう何も聞こえなかった。



20210112



週刊で死にそうになってる私のメンタル




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