05
真依ちゃんに事情を話して決めてもらった洋服。昔は和服しか着てないし相変わらず洋服に疎いなぁと改めて自覚した。
にしても横浜駅で待ち合わせって言われたのだけれど…凄い一生懸命スマホを見てる順平が可愛くて声をかけずらいのだ。
「 ッ菫!? い、いつから… 」
『 5分位前かなぁ 』
「 もう! 着いたなら声掛けてよ! 」
頬を僅かに膨らます姿も可愛らしくあの時から随分と変わって笑うようになった。
会う度に憎悪に染まった瞳ではないことに安堵の息を吐く。
正直いつも声を掛けられない理由はコレだ。
もし順平が順平の瞳が黒く染ってしまったらそれは私が悪いから。
怖いのだ、彼に嫌われるのが、お前のせいだと言われるのが。
「 菫? 大丈夫? 」
『 うん。元気そうで良かったなぁって思ってたの 』
順平の手を握り行き慣れた映画館へと脚を向ける。
もうすぐ夏だと言うに未だに彼の手は冷たい。
そういえば昔傑君が言っていた 「 手が冷たい人は心が暖かいらしいよ 」って。
『 順平の手って冷たいんだねぇ 』
「 確かに、人より冷たいかも 」
『 昔ね、お兄ちゃんみたいに懐いてた人が教えてくれたの、手が冷たい人は心が暖かいって 』
『 順平の手握ってると、アレって本当なんだぁって思うよ 』
私の手は暖かい、だから心は冷たいと。
あながち間違いではないし暖かいからこうして順平の体温を感じとれるのは悪い気はしない。
握られた彼はと言うと優しい目で私の手を握り直した。
「 でも菫は手も心も暖かいし、優しいでしょ 」
『 …順平が言うならそうなのかも 』
彼が私を優しいと言うなら私は自分が思ってる以上に優しいのかもしれない。
そんな私達を嘲笑うかのように生ぬるい風がスカートの裾を揺らした。
「 映画、面白かった? 」
『 うん、アクション系はそんな見たこと無かったけど…順平と見ると面白かったぁ 』
終わったあとに楽しそうに語る順平はとてもキラキラしていて見ている私も楽しくなる。
変なの、って思うんだけれどそれ以上にもっと聞きたいって気持ちの方が大きい。
「 そういえば祓い屋の仕事やってる時ってネックレス、邪魔になってない? 」
『 全然。邪魔でも返さないよ? 』
「 ちっ、違う! その…1回溶かしちゃうけど指輪に加工してくれるところがあるらしくて… 」
『 へぇ~。でも邪魔じゃないから大丈夫! 』
お揃いのネックレスが首元で光る。
ちゃんとそのままの形を大事にしたいから、私は。
伝えたことないし伝える気もないけれど。
『 順平は指輪がよかったの? 』
「 そうじゃないけど……指輪の方が無くさないかな…っていうか… 」
『 なら買いに行く? 』
「
へっ!? 」
『 冗談だけどねぇ。今日はもう時間も無いし 』
「 …アハハ…冗談、か 」
『 今度行こうね? 』
「 ~ッ! 」
真っ赤な顔をした順平にそのまま駅まで送ってもらい別れる。
名残惜しいな、なんて思うようになったのはいつからだろう。
20201224
さり気ない束縛じゅんぺ。
付き合って初日で指輪渡してくる野郎がいたから気持ち悪くて返した経験がある。
でもこの2人は多分気にしてない、寧ろ当たり前みたいな領域かも。