2020 五条悟 birthday


高専時代の五条悟
ハピエンではないので注意死にます


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「 おやすみ、祀 」

『 うん、おやすみ 』


22時になる少し前、いつものお決まりの台詞を放ち画面下にある赤い部分をタップした。
いつからかもう互いに言わなくなった言葉を小さく『 愛してるよ 』と呟き鼻の奥がツーンとしたと同時に溢れそうなモノを溢れさせない様に歯を食いしばる。
もう随分と前から彼の心が私の元に無いのは知っているけれど私は彼の手を、心を手放すことが出来ずもう何ヶ月もこんな関係。
履歴を見てハッと乾いた笑いしか出ない。
いい加減にしたらいいのに、私も。


『 でも好きだから、愛してるから、 』


とてもじゃないけど私から別れの言葉を囁くなんて無理なのだ。
嘘でも『 きらい 』なんて『 別れよう 』なんて言えなくて。
私は今日も彼からその言葉を伝えてくれるのを待っている。



五条悟とつき合い始めたのは半年前、彼と手を繋ぐという行為をしなくなったのは3ヶ月前、そして誕生日を祝わなくなったのは今日。
『 まだ起きてる? 』から始まり「 起きてるよ 」と返事に『 そっか 』で終わらせたのは誰でもない私。
『 誕生日おめでとう 』の一言が言えなかった。
あの人は勘が鋭いから気づいていただろうに「 何か用? 今俺忙しいから用がないなら切るよ 」なんて言われて素直に電話を切るなんてなんて馬鹿なんだろう。


『 明日から、話せないや 』


声が震えてスマホを持つ手も震えて、視界が霞む。
ねぇお願い、悟、貴方への気持ちを整理する為に貴方から私に酷い言葉を放って。
つき合う前みたいに「 鬱陶しい 」でもなんでもいいから、「 嫌いだから別れて 」と言って。
そうじゃないと私いつまでも前に進めない、この心を離すことができない。





そんな関係を続けたまま更に1年。
あの日から1度も通話は繋げていない。
だって今更何を話せばいいの? そもそももう向こうは自然消滅したって感じてる頃合いなんじゃないの?
そんな不安を感じながら浅い呼吸が続く自分に苦笑した。
路地裏の冷たいコンクリートを背もたれにあの日とは違った手の震えで電話帳を開く。
お目当ての人物の名前はか行へ移動すると1番上に出てきて考える間もなく指はその名前を押した。


1コール 2コール と無機質な音が路地裏に響く。
やっぱりもう着拒されてるかな、なんて思いつつ自分から切ることは出来なかった。


「 ………なに 」


8コール目で出た彼の声に自然と涙が溢れてしまう。
凄い不機嫌な声だ、けれど今はこの声すらも愛しく感じてしまうなんてもう末期だな。


『 ね、悟 』

「 …だからなに 」

『 ずっと、あいしてるから 』

「 は? 」

『 これ、ずっといいたくて、 』

「 ……ちょっと、お前今何処に、 」

『 たんじょうび、おめでと 』

「 …祀? なぁ祀!? 」


あぁ、嫌だな、そんな風に名前を呼ばないでよ。


死にたく、ないなぁ


この弱音が届いてないことを祈り、あの日みたいに赤い部分をタップし目を閉じた。




2020.12.07


title & theme…携帯恋話


五条先生誕生日おめでとうございます。
って意味を込めて書いたんだが何故かやっぱりハピエンが書けない。
これ実は書き直して書き直して書き直した作品で1度目は宿儺様に寝取られ、2度目は五条先生に殺され、3度目でこれ……。

『 Hey Siri. ハピエンの書き方を教えて 』

「 すみません、よくわかりません 」


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