それは最期の願い


軽い本誌ネタバレが有ります
時系列は地下調査のところ。前提としてわかって欲しいのはアーサーと行動してます。


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「 あらぁ、祀じゃないの! 」

「 知り合いか? 」

『 知らん 』


第8特殊消防隊は地下ネザーの調査許可を貰い順調かと思いきや立ち入って早々仲間と逸れ何故か自称騎士王のアーサーとずっと無言で共にいた。道中彼に突然「 手を繋ぐか 」と言われたが自分は元々第7に所属している隊員で無期限研修配属中なわけであって仲良くする為に配属した訳では無いので丁重にお断りした。
そんなことは置いといて今は何故か話したことも会ったこともない伝導者に名を呼ばれた事の方が重大であろう。


「 酷いわね、旦那の顔も忘れるなんて 」

「 …趣味を疑うぞ新門 」

「 あんな化け物のどこがいいんだ? 」

『 人の話聞いてた? ねぇ? 知らないって言ったよな? 』


火縄中隊長もアーサーもわざとなのか天然なのか分からないが今は冗談でも辞めてほしい。旦那だって? コイツが? 勘弁しろ、コイツと夫婦になるならまだアーサーと夫婦になった方がましな人生だ。怒られるから若には言わなけれど。


『 あー…えっと…伝導者さん? 多分それ誰かと勘違いしてるよ 』

「 昔みたいにアナタ≠ニかヨナ≠ナいいのに。 照れてるの? 」

『 此処に通訳できる人いませんかー!? 』


この伝導者全く話が通じねぇ! 以前浅草に現れたアローって伝導者はどこ!? 彼女なら会話できるけどって、さっき上から見てる時にやられてたわ。アローさん起きてくださいお願いします。


『 ッ、もう1人はアンタに任せる。アタシはこの話の通じない脳内お花畑野郎を相手にするから 』

「 完了した 」※了解した


一先ずもう1人の能力であろう陽炎が届かぬ範囲まで走ると脳内お花畑野郎は大人しく着いてくる。アタシの能力もここまで離れたら彼等に迷惑をかけないであろう。


『 で、アタシがアンタの嫁だっけ。よくそんな妄想できるわね 』


若でもやらないぞ、多分。それにアタシはヒカゲとヒナタっていう心に決めた子達がいるからどの道アンタの気持ちには答えられない。あの子達より可愛くなってから出直してこい。


「 本当に忘れてるのね…灰島に記憶でも弄られたのかしら…

『 まぁなんでもいいや。第7特殊消防隊 中隊長 新門祀、推して参る! 』


先程と打って変わって冷めた目をし一向に動かない男に炎の薙刀を振り下ろそうとした時腕が止まった。あと数cmで首を落とせると言うのに腕が動いてくれない。それだけならまだしも片目からは悲しくもないのに涙が溢れてくる。


『 ぁ…なんで…!? どうして動いてくれないの!? 』

「 …250年、長かったわ。私が貴女を失ってから。何度も産まれ変わる貴女を見て会って話してきた! けれどどれも失敗だったの…でもやっと! やっと私の貴女・・・・が帰ってきてくれたっ! 」


紅潮した表情を見せる男に不思議と身体は安心していた。頭では気持ち悪いと言っても身体はソレを受け入れようとする。


「 んふふ、教えてあげるわ祀。貴女は250年前私と夫婦だったの。でも1度目の大災害が失敗した時…貴女は死んでしまった 」


きっと此方の世界が身体に合わなかったんだろうとヨナは言う。けれどアタシは彼が言う言葉が理解できない。だってアタシという女は若の、新門紅丸と共に育ちヒカゲとヒナタを守るために力を手に入れたアドラバーストでもなんでもないただの女だ。


『 よ、な 』

「 えぇ、私は此処にいるわ 」

『 よな 』

「 もうなぁに? 」


口が止まらない、止まってくれない。これを言ってはいけない気がする。それでも私はこの言葉を言いたいの。


『 ヨナ 逢いたかった 』


もう自分の意志で動かせない身体を無理矢理動かして小さな焔を放った。そして意識はもう闇の中へ。


「 私も逢いたかったわ、祀 」


抱きしめられたその腕はとても冷たく人形の様な感覚だった。




『 ヒカゲ ヒナタ 愛してる、私の可愛い妹達 』

『 紺炉、迷惑ばかりかけてごめん。最期の我儘、皆を頼みます 』

『 約束守れそうにないや、お兄ちゃん、ごめん 』



20201111



きっとこの後ヒナヒカが突然泣き出すと思う。そして察するお兄ちゃん(紅丸)
炎炎の推しはまぁコレ見てわかりますよね、ヨナちゃんです。ドが付く性癖に刺さった…


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