03
『 よぉ、カナヲ。鬼殺隊に入れたんだって? 』
「 …はい 」
小さく頷きながら消えそうな声で返事をするカナヲの頭を撫でる。
カナエが守りたかった存在である蝶屋敷の人は俺にとって宝であり形見であり償いであるから正直しのぶにもカナヲにも鬼殺隊を除隊してほしい気持ちは大きいんだが彼女達の気が強すぎて話を聞いてくれることはなかった。
「 兄さん 」
『 んー? 』
「 死を選んではダメです 」
その言葉に思わず目を見開いた。
まさかカナヲからそんな言葉が出るなんて思ってもいなかったから。
別に早くカナエの元へなんて思ったことがないわけじゃないけれどそれ以上に蝶屋敷を守らなければと思っていた、此処を彼女たちを守れて死ねるならそれは本望だと。
きっとカナヲはそれが分かっていたんだろう。
『 そうだな、死なないように気をつけるよ 』
「 兄さんに何か有ればしのぶ様やアオイが悲しみます 」
『 えー? そーう? 清々するんじゃないかなぁ 』
カナエを守れなかった人間がやっと消えて、と真っ直ぐな目をしたこの子には言えなかった。
俺は墓場まで持っていく業がある、それはしのぶにもカナヲにもアオイにも言っていない、御館様と杏寿郎以外に言ってないことで。
何か運命が変わることがないと一生口にすることはないだろう。
《 カァァ! 栗花落カナヲ! 南西ノ町ヘ向カエェ! 》
「 …兄さん、また稽古つけてください 」
『 …うん、いいよ 』
カナヲ、ごめんな。
お前が慕ってる俺は、お前を救ってくれたカナエを殺したんだよ。
あの日あの時俺は──────
『 カナエじゃなく一般隊士を選んだんだ 』