02
『 アオイ、きよ、すみ、なほ。ただいま 』
「 おかえりなさい 永久さん 」
「「「 永久さんだ~! おかえりなさい~! 」」」
『 おう、元気にしてたか? 』
人懐っこい笑顔で厨房の壁に凭れている彼は気配を悟らすことなく立っていた。
三人に金平糖に手渡し彼女達はそれを置くために部屋へ戻っていく。
「 流石柱ですね。気づきませんでした 」
『 まぁ驚かせてやろうと思ったし 』
「 今日に戻ってくると文を寄越した癖に何が驚かせてやろうですか 」
そんな彼に呆れながらも味見をしてもらう為に小皿を手渡す。
いつもの事だから何も違和感なくそれを受け取り『 美味しい 』と私の好きな笑顔で返してくれる。
これが今の私の小さな幸せなのだ。
『 だって文を出さないと心配性のアオイが泣いちゃうからなぁ 』
「 馬鹿にしてます? 」
『 まさか 』
感謝してるよ、いつも。とカナエ様が生きていた時の柔らかな雰囲気で微笑んだ。
あぁ、まただ。彼は時々以前の彼の雰囲気を出すことが多々ある。
どうしてそんな雰囲気を出すのかわからないけど無意識なんだろう。
そうではなくては、しのぶ様が可哀想だ。
『 アオイ 』
「 なんですか 」
『 いつもありがとう 』
「 ……それはこちらの台詞です 」
一般隊士には彼が怠け者で蝶屋敷に入り浸っている柱に見えるのかも知れないけど私は知っている。
蝶屋敷の近くで現れた鬼は全て彼が滅殺してること、薬草を摘むために勉強してそれらを全て暗記していること、隊士を目指す蝶屋敷の孤児に剣を教えていること、沢山いい所を知っているから何も知らない一般隊士が建てる噂が腹立たしい。
そもそも、自分の為に隊士を殺した、なんて彼がそんな事するわけないだろう。
だって落命した隊士の日輪刀無くとも永久さんは強いのだから。
「 さて、ご飯にするのでお部屋にお戻りください 」
『 はーい 』