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「
あの! 永久さん! 」
『 ん? そんな大きな声出してどうした? 』
機能回復訓練の剣術を担当している時、炭治郎が突然大きな声をあげた。
今日は孤児の子達もおらず炭治郎だけなのだが最初からソワソワとしていて。
しのぶの大事にしてる物でも壊したのかと思っていたがどうやら違ったみたいだ。
「 永久さんって、以前鬼を助けた事ありますか? 」
『 ……俺、柱だよ? 』
「 わかってます!!! 」
でも、と言葉を続ける炭治郎に耳を傾けると一つだけ思い当たる事があった。
助けたというかアレは、
『
重ねただけなんだけど、 』
「 …何か言いました? 」
『 いや、なんでも。で? その鬼がどうしたの? 』
「 はい。那田蜘蛛山にいたその鬼は俺の攻撃を受けた後に言ったんです、死ぬ前に一度だけ逢いたかった≠チて 」
『 へぇ… 』
木刀の先を地に着けて目を伏せた。
炭治郎が言っている鬼と俺が思っている鬼が同一の鬼であるなら彼女は死んだと言うことになる。
確かに人間を殺して喰っていたがそうでなければ優しく普通の女性のような鬼。
たまたま出逢った鬼がたまたま那田蜘蛛山にいてたまたま鬼殺隊の隊員を殺して。
あの時殺さなかった事を少しだけ悔やむということも無く何故か心に穴が空いた感じがする。
『 その鬼は、炭治郎が殺してくれたの? 』
「 …はい、成る可く痛くない技で 」
『 そう…ありがとう 』
あの時出逢ったあの鬼は俺を喰わなかった、それどころか襲わなかった。
だから俺も見逃した、そして重ねて。
愛があったかと問われたら答えは否に等しい。
自分で気づいてないだけかもしれないけれど。
『 もし…俺が生きてる間に鬼舞辻を殺れたら迎えに行く予定だったんだ 』
「 …その鬼が餓死に耐えられなくても…ですか 」
『 あの子は耐えれる、なんなら1ヶ月耐えてた…それどころか1ヶ月間俺の傷を治すのを手伝ってくれんだ 』
傷が治るまで蝶屋敷に戻らない癖がある俺はどうしたものかと道に転げていた。
鎹鴉に伝達を頼むのも嫌になり最早鬼と戦う事も生きることさえも疲れ果てた俺を助けたのがあの鬼の女。
「 …大丈夫、ですか? 」
『 …いや、大丈夫じゃない、けど 』
お互いに敵だと分かっていたのに差し出された手を握りこの鬼になら喰われてもいいかなぁなんて軽い気持ちで看病を受けた馬鹿な俺。
「 見て! 綺麗な花でしょ? これはねぇ、 」『 ……禰豆子みたいに、連れてやればよかった、 』
「 !! 」
『 そしたら禰豆子だってもっと理解を得られたかもしれないし、隊員が死ぬこともなかった、お前達が怪我を負うことも無かったんだ、ごめんな、炭治郎 』
泣きじゃくる俺を背後から誰かが抱き締めた気がした。
20201212
那田蜘蛛山のお母さんと実は会ってたとか設定。
見ていた感じ元は子供の鬼なイメージがあったので永久君といる時くらいは無邪気な子であってほしいと願って……
もし連れていたらきっと最高のペアになってた(っていうかさせた)
無邪気な姿をカナエさんと重ねてる永久君とわかってはいても傍にいたい母蜘蛛さん…名前くらいあればよかったのにと今でも思ってます。