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炭治郎達がだいぶ入院当初よりか良くなってきた頃。庭でアオイが何かを運ぶ姿が目に入った。手に持つは禰豆子が入っていたであろう箱。なるほど、直してあげるのか。
『 手伝おうか? 』
「 結構です 」
『 え~? アオイが怪我するの嫌なんだけど 』
「 知りません 」
柱合会議から戻ってきて数刻経った時からアオイは地の底に落ちたように機嫌が悪い。理由はなんとなくわかる。いや分からないけど分かる。柱合会議でしのぶがアオイにチクリますと言っていたから。
『 ったく…蓋は俺が直すよ。力仕事なんだから 』
「 大して力もないくせに 」
『 そんなことねぇよ。アオイより全然筋力はある 』
手から蓋を強奪して組み立て始めるとムスッと頬を膨らませ隣に座るアオイに思わず笑ってしまった。そういえばカナエと喧嘩した時も彼女は同じように頬を膨らませて背中を合わせてきたな。蝶屋敷は案外似た者の集まりなのかもしれない。
『 なぁーに怒ってんの 』
「 別に怒ってません 」
『 そう? それじゃ今から言うのは独り言だから 』
『 …俺は鬼殺隊の皆が大事だけれど、何よりも守りたいのは蝶屋敷の皆だ。カナエ亡き後俺を支えてくれたお前らが何よりも大切で守りたいんだよ 』
「 ────知ってます 」
『 知ってるのかよ… 』
「 けれど私は甘露寺様の様に強くもなければ戦場に出ている隊士でも無い。無力なのです 」
「 こんな足でまとい、いつ捨てられてもおかしくない 」と我慢していたであろう涙が頬をつたい割烹着に涙の跡を作る。彼女は毎日不安を抱えて生きてきたのだろう。俺が捨てるわけないと頭で理解しても心が否定するのだ。俺がカナエを殺したと思っても心のどこかでは鬼のせいにしているかのように。
『 阿呆 』
「 なっ、こっちはどれだけ不安で…! 」
『 俺はね、お前たち捨てるくらいなら死を選ぶ 』
アオイやしのぶが生きてくれるなら、喜んでこの命を差し出すと約束しよう。お前たちがあの鬼を、禰豆子を殺せと言うなら殺す。穢れ仕事は俺の役目だから。
20201130
蝶屋敷への愛というか何かが重い夢主くん。
多分この子殺しても死ななさそうと自分で思う。