08
「
出て来い鬼ィィ! お前の大好きな人間の血だァ!! 」
やること残酷だなぁと思いつついつでも傍に寄れるように僅かに片脚に力を入れた。これ以上はいくらなんでも許されないぞ、不死川。もし本当にその鬼が人を喰っていないと言うならばそれはカナエの願いの元になるのだから。
「 永久さん。お気を確かに 」
『 わかってる 』
流石に
御館様の前では隊立違反なんてしないさ。彼奴が一人の時は知らね、自分の身くらい自分で守れ。
「 伊黒さん 強く押さえすぎです。少し弛めてください 」
「 動こうとするから押さえてるだけだが? 」
絶対嘘だな、間違いない。九割くらいは私情だ、絶対に。っていうか師範から手紙が来て切腹するのが師範と義勇…もしかしなくても炭治郎も俺の弟弟子なのでは!? 師範からは竈門炭治郎をよろしくだのなんだの書いてあったが。
「 ( 永久さんさっきから百面相してるけれどかっこいいわ…! ) 」
「
竈門君!! 」
血管と縄が切れる音が聞こえる。そして義勇に掴まれた伊黒の手。なるほど、お前が炭治郎を鬼殺隊へ導いたのか。だいたいわかった。
「
禰豆子!! 」
『 カナエ!! 』あぁやっぱり、彼は少しばかり昔の俺に似ているのは────────当たりか。
顔が似ているわけでも境遇が似ているわけでもない。きっと、鬼や身内への執着心が似ているのだろう。今やっと見えたよ、お前の心が。
『 これ以上はやめろ、不死川 』
「 永久、 」
「 どうしたのかな? 」
「 鬼の女の子はそっぽ向きました 」
まさか俺が来るとは思っていなかったであろう不死川は口を開き唖然としていた。予想と違う人間が来てごめんなぁ。物理的喧嘩は好きじゃあないんだが…
『 傷、手当するぞ 』
「 触るな! 」
『 はぁ? 鬼に負けたことがそんな悔しいかよ。禰豆子が普通の鬼じゃねぇだけだろ。なー? 』
禰豆子の頭を撫で箱へ戻るように誘導する。自分の羽織で壊れた蓋を押さえながら御館様の話を耳に入れる。ねぇカナエ俺はこれでよかった?
「 とってもかっこよかったわ 」『 そ、 』
20201101