全員出動の段 | ナノ

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「 なんでこんな所に落とし穴が!? 」

『 この掘り方………アンタでしょ、喜八郎 』

「 落とし穴ではありませーん。蛸壺三号のターコちゃんと四号のタワエモンです。村の土湿っぽいんだよね、お尻濡れてませんか? 」


途端に響く拳骨音。
振り返ると先程まで伝令を飛ばしていた先輩方がいるではないか。


蛸壺掘るなら最前線にしろ!!!!

『 左近、数馬、大丈夫? 』

「 ちょ、ちょっと、痛いです… 」

『 …喜八郎、ちょっと 』


そしてまた響く拳骨音。
今回ばかりは流石に喜八郎の味方は出来ない。
左近を抱え数馬を俵担ぎにすると臨時保健室へ傷に響かないようにゆっくりと運んだ。


『 ごめんね、二人とも。痛かったでしょう? 』

「 大丈夫ですよ、陽衣先輩。僕達の不幸は今に始まった事じゃないので 」


伏木蔵が数馬の手当をして私が左近の脚を木の板で固定し終わると結ばれている髪に指を通した。
こんなに小さな子が頑張っているんだから私も負けてられない。


「 …陽衣先輩って、優しいですよね 」

『 あら、私を優しいって感じる左近のが優しいよ 』


怪我をしてしまい、悔しいのか、泣きそうになってる左近の額に小さく接吻をして頭を撫でて落ち着かせる。


『 今はゆっくりおやすみ、左近の分も私がどうにかするから 』


保健室を後に私は本来の持ち場に戻ると小さく縮こまっている伝七が視界に入った。
あぁ覚えているよ、私が君の手を振り払った事を。
だから君は今、泣いているんだ。


『 伝七 』

「 ッ、ねぇ…さま… 」

『 ……おいで 』


私がそう呼び掛けると大きな目に涙をいっぱい溜めて声を上げまいと私の肩に押し付ける。
背中に回された小さな手は震えていて少し前の自分を殺めたい程後悔した。


『 伝七が抱き締めてくれたほんの少しの間、私とっても気が楽だったの 』

「 、ほんとに…? 」

『 えぇ、だから──────── 』





ありがとう、伝七




今の私のありったけの愛を込めて、そう伝えると蒲公英の様に優しく太陽の様に暖かく笑ってくれたのだ。





20210704



久々に書くと伝ちゃんの天使度が増してないか?
黒門伝七は今日もかわいい…沢山笑顔で過ごしてね…

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