全員出動の段 | ナノ

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-伝七side-


柵よりの中央に正座して瞳を閉じているねぇ様の背中に引っ付いた。本当に集中しているせいかねぇ様は微動もしない。
けれど先程から矢羽根を中間地点で待機している先輩に飛ばしまたその先輩が次の人へ飛ばしているから意識はあるのだ。
顔を上げると眉間にシワが寄っているのが視界に入りねぇ様が少しでも安心出来るようにギュッと抱き締める。
今はそんなに気が抜けない状況なんだろうか。
病み上がりなのだから無理はしないでほしいのに。


『 …しまっ、 』


ハッと目を開いたねぇ様は一瞬のうちに僕の腕の中から姿を消す。
突然消えた消失感と自分が役に立てない悔しさで涙が出そうになったが歯を食いしばり耐えた、だって泣いてはねぇ様に迷惑をかけてしまうから。
けれど堪えきれなかった涙が頬をつたい地面に跡をつけた。





彼女が昔から強い人だと言うのは知っている。
初めて会った日に、裏山で一番大きいと言われていた熊の首を折ったのだから。


「 た、たすけて…! 」


当時の僕は本当に無力で忍術学園に入園しようなんてこれっぽっちも考えておらず普通に働いてい普通に生活するんだろうと思っていた。
でもあの日おつかい帰りに出会った熊に喰われると思い無力な僕は泣く事しかできず。
足は挫いているし、逃げてもコイツらは早い生き物だと脳は理解している。

だから、


『 キミ だいじょーぶ? 』

「 陽衣 この熊どうするのさ!? 」

『 私いらないから兵助にあげる 』


一瞬で助けてくれたねぇ様は僕にとっての神様なのだ。命の時間を延ばしてくれた、大事な人。


「 ん? キミ 怪我してるじゃないか! 」

『 爪でヤられたなら綺麗な水でまず傷口洗いなよ 』

「 ったく、血の匂いなんてしてないだろ。…捻挫してるみたいだな 」

『 アンタがわかんないと思って言ったの、私優しいから。捻挫程度なら私がこの子を家まで送って行くから、兵助この熊持って帰って 』

いらないけど!?

『 私より身長低い癖に生意気ねぇ!? まぁいいわ、それなら勘右衛門辺りにあげて 』


久々知先輩、当時は名も知らない男の人だったが彼女はその人を置いて僕を優しく抱き上げて家へ最短距離で送ってくれた。


「 あの! 名前! 教えてください! 」

『 …えぇー…ま、いいか。忍術学園三年い組、立花陽衣。キミは? 』

「 黒門伝七です! 忍術学園って今からでも入学試験とか間に合いますか!? 」

『 …え、知らないわよそんなの 』


だって私責任者じゃないもん、って笑うこの人に唖然としたのは僕の大切な思い出。



そして春が来て、僕の大切なねぇ様になる。



20201214



さり気なく伝七との出逢いをセージではなくこちらにぶっ込む。
そしてこれの後に見てほしいのは rkrn に載せた 恋はベルを鳴らすけど という作品

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