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久々知兵助が作業に戻り四半刻も経たない間にじっとしているのは性にあわないせいか羽織を肩にかけ皆の作業を手伝おうとした。けれども皆して口を揃え「 休んでいろ 」と言うのだ。学園長が先に手を回したのかもしれないなぁと諦めつつ宿へ脚を向けた時、逆茂木を並べている方が騒がしくなり思わず振り返る。
『 あら…あれは… 』
見覚えのある馬や旗、人がいた。
虎ちゃんのお父上様とその隊員達、いつの間に呼ばれていたのだろうか。
照星さんもいらっしゃるみたいだし挨拶くらいしとく方がいいだろう。
「 あっ、ねぇちゃん!? もう歩いてもいいの!? 」
『 兵ちゃん心配かけてごめんね、もう大丈夫。こんにちは、虎若のお父上様に佐武鉄砲隊の皆様 』
近くに寄ると大きな木材を運ぶ兵ちゃんが飛びついてきて両足には三治郎と団蔵がしがみついて大泣きしている。少し遠くからの挨拶でごめんなさい、鉄砲隊の皆様。
「 陽衣くん、怪我でもしていたのか 」
『 まさか。少し体調を崩しただけです 』
嘘は言ってない。一年生に凄いジト目で見られたけど嘘は言ってないわ。
だって無傷だったもの、私。
彼奴にはかすり傷負わせたけれど私は無傷。
あれ、これって実質私の勝ちなのでは?
「 陽衣さん、倒れたんです 」
『
…虎ちゃん 』
「 なのに無理して手伝おうとしてるんでよ! 」
『 虎 』
「 照星さんも止めてください! 皆止めてるのに止まってくれないんです! 」
『
虎若、少し黙って 』
名を呼んでも閉じない虎ちゃんの口を手で塞ぎ笑顔で照星さんと父上様を見つめる。
だって気づいているでしょう、私が元気だって。
「 ……この戦には出るのか 」
『 …要望があれば 』
無くても出るけど。
「 気をつけろ 」
『 誰に言ってるんです? 』
「 えっ、止めてくれないんですか!? 」
一年生の時から目的の為なら手段は選ばない忍≠ナ有名な私に向かって「 気をつけろ 」だなんて。あと虎ちゃんは少し黙ってお願い仕事減らさないで。
20201127
団蔵「 なんかいつもの強気な陽衣姉さんに戻ってきたね! 」
金吾「 うん! 頼れる先輩って感じがして安心する! 」
三治郎「 えへへ、陽衣おねぇちゃんの脚にしがみついちゃった! 」
兵太夫「 ……(ドン引き) 」