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「 陽衣ッ!? 」
忍術学園の皆が戦いの準備をしている時に身体を考えて休ませてもらっていた私は縁に座り皆を眺めていると学園を出る前に泣かせてしまった男が駆け寄ってくる。その表情は何処か辛そうだが安堵の顔であって胸が苦しくなった。
『 へい、すけ 』
「 ~ッ、陽衣! 」
座っている私をお構い無しに力いっぱい抱きしめてきた彼の体温に自然と波が頬をつたう。息をすることを許された私に太陽の光が差したように暖かく眩しい、私にとって彼はそんな存在なのは確かであって。
「 無事でよかったっ、倒れたって聞いた時心臓が止まるかと思って、 」
『 うん 』
「 俺、陽衣を失うのがこんなにも怖いんだって思わなかったっ、 」
兵助の瞳からもポロポロと雫が溢れている。どうして彼はここまでして私の傍にいようとするんだろう。双忍の時の情であるならばそれは逆に私を傷つけるというのに。お前はそれを知っているはずだ。
「 おかえり、陽衣 」
『 …ただいま、兵助 』
あぁもうそんなことどうでもいい。神様、今だけはどうか私が彼と話すことを許してください。守るために沢山人を殺めたけど沢山頑張ったじゃないですか。今くらいはどうか、どうか──────────
不安に浸っていると暖かい手が冷たくなった私の手を掴む。おかげで意識は直ぐに現実に戻ってくるが互いの瞳は揺らいでいて何処か不安げだ。
「 ……陽衣、今日くらいは話そう 」
『 準備があるんじゃないの 』
「 大丈夫。少しだけだから 」
その言葉に戸惑ったけれど少しだけ、ほんの少しだけ助けを求めない程度に口を開き山での出来事を吐いた。
『 普通じゃないって、言われた 』
雑渡昆奈門、タソガレドキ忍軍の組頭。暗示が解けた私が相手でも骨を折ることも出来ずかすり傷しか負わせる事ができなかった。そんな忍に普通ではない≠ニ言われたのだからそれなりにダメージだってある。
「 少し人より強いだけじゃないか 」
『 でも、 』
「 大丈夫だよ、陽衣 」
「 俺は陽衣の努力を知っているから 」
彼の優しさに一度は止まった涙がまた溢れるのがわかった。
20201120
本当は此処でキスさせたかった!(大声)
絶対に久々知は焦っている…勘ちゃんライバルだし四年生みたいに傍にいれないから焦ってる…!
多分他学年では彼が1番心配してる気がする。