07
地を駆け抜ける乱太郎を善法寺先輩と共に援護する、無事に園田村まで辿り着けると良いんだけれど。
「 乱太郎! 」
「 大丈夫、ちょっと捻っただけです! 」
足を挫いたのであろう乱太郎の傍に着地して辺りの気配を探る。
まだ誰も追ってきてはいないけれど─────
『
なんか、ワクワクする 』
「 陽衣ちゃん、乱太郎を軽く手当するからその間護衛を頼んでもいいかい? 」
『 元々忍務の内容は乱太郎の護衛です 』
「 あはは…そうだったね 」
善法寺先輩が乱太郎の足を固定している間ずっと気配を探っていると覚えのない気配を感じ自分達が来た方面へ視線をやった。
何故か分からないけれど気持ちが高揚している。
間違いない、これは覚えてはいけない感情だ。
投箭を指に挟み先輩に目で合図すると私は空中へと身体を飛ばした。
へぇ今日は随分と綺麗な三日月だ。
「 危ない! 」
「 おっと、 」
その声が聞こえたと同時にあやべを投げるが避けられてしまう。
久々知兵助以外で避けられたのは初めてだから驚いた、普通の忍じゃないのは雰囲気から察していたけれど。
「 乱太郎! 先に行け! 」
苦無で善法寺先輩に応戦するけどやはり普段からペアを組んでた訳では無いから少しだけやりづらいと感じてしまう。
じゃあ誰だとやりやすいのかと言われたらそれは立花先輩と喜八郎、後は黒歴史だからあまり多くは言わないが久々知兵助だろうなと自覚はしている。
でも私だってくのいちだ、人に合わせる事だってできる、できるけど…今は乱太郎が…
『 あーもう! 先に行きなさい! 乱太郎! 』
「 ~ッ ごめんなさい! 」
「 よそ見っ! 」
『 しまっ、善法寺先輩! 』
乱太郎が山奥へ消えていくのを見送っている善法寺先輩の鳩尾に一撃が入る。
そのまま畳み掛けようとする忍に踵を落とそうとしたがそれすらも避けられ先輩は木に押さえつけられてしまった。
今下手に動くと彼の命は保証できない、けれど私の忍務は? 乱太郎の護衛でしょう? なのに乱太郎にすら怪我をさせて先輩にも怪我をさせるのか?
『
こんな結果じゃ…兄さんに、きらわれちゃう… 』
自分の妹なのに簡単な護衛すら出来ないのか、と。
乱太郎の護衛に推薦してくれたのは兄さんだ。
このことを知ってしまえばきっと呆れてものも言えなくなるだろう。
そんなのは嫌だ、だったら考えろ、あの鉄の塊が伊作先輩の首を裂く前にアイツの腕を堕とす方法を。
「 いつも一人で無理しちゃう陽衣へ大好きな喜八郎くんからの御守りでーす 」
『 …きはち、ろ… 』
ふと手元に転がってるあやべを見た、そうだ、コイツは何のために糸が付いているんだ。
喜八郎が「 陽衣が使い易いように改良してもらった 」と言って渡してきたんじゃないか。
何も私のあやべは人を押さえつけたり身体を貫通させるだけじゃない、あの片腕をとる事ができるんだ。
忘れるな、私の今≠竄驍ラき事を。
『 それ以上その人の首にその鉄の塊を押し付けたらアンタの腕を飛ばすぞ 』
20201031
次回
暴走人形
唐突に次の08はタイトル付けたくなったの許してください…