03
-久々知兵助side-
悔しい
「 っ…なんで、 」
自分が無力なのが
「 どうして 」
惚れた女の一人すら救えないなんて
「 行かないでくれ、 」
この一言が言えないなんて
陽衣が襖を閉めてからどれだけ経ったのかはもうわからない。
けれどまだ外は明るいからきっと半刻も経っていないんだろうか。
いつの間にか座り込んでいた腰を上げて力無く襖を開けたらそこには親友の勘右衛門が縁に座り脚をぷらぷらとさせていた。
「 兵助 」
彼はこちらを振り向くこと無く名前を呼んだ。
いつから見ていたんだろう、もし最初から見られていたなら少しだけ恥ずかしい。
惚れた女の部屋で悔し涙を流す姿なんて見られたくなかった。
「 陽衣ちゃんって本当に強情だよね~ 」
勘右衛門は僅かにこちらを向き苦笑した。
その目元は少しだけ赤い、というよりか僅かに腫れている。
あぁ、彼もまた、
彼女に恋焦がれてるのか。
「 …少し前に無理矢理、委員長委員会室に連れて来てもらった事があるんだけど。その時も頑として俺や三郎と話さなくてさぁ 」
だって彼女はプライドが高くて自分の意見を曲げない子だから。
それでも尚そこが美しいところで陽衣のいいところでもある。
「 けれどそんな強情な裏には優しさがある。それが今回みたいに自分を犠牲にしてる事だとしても、他の人を守ろうとする 」
「 …勘右衛門って実は陽衣の事ちゃんと見てるよな 」
「 あはは、なにそれ。でも…そんなところが好きだなって自覚はあるよ 」
勘ちゃんの口から出た言葉に思わず体が硬直した。
だってまさか認めるなんて思ってなかったから。
きっといつもみたいに彼ははぐらかすんだろうって思っていたのに。
「 俺たち好敵手だよ、兵助 」
そうハッキリと言って笑った彼に何も言えなかった。