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触れ合ったらもう戻れない



※少しだけ注意

+


『 なんか寒いと思ったら…降ってるのか 』


襖を開けたと同時に冷たい空気が部屋に入ってきてまだ結われてない髪が靡いた。目を凝らさずともわかるくらいに外は白く未だ止まることを知らない雪が疎らに降り続けている。怖いもの知らずの私は素足のまま縁を降りて真っ白で穢れを知らない積もった雪に両脚を踏み入れた。雪は私の膝くらいまで積もっていて。


『 つめたい 』


そりゃそうかと零した言葉を拾う人物はいない。そんな私は忌々しい物を見るような目で脚を取り込む雪を睨みつけただ立ち尽くし脳内ではあの日の夜を思い出していた、あの日は──────睦月のまだ雪が降り続いていた日、私と久々知兵助が超えてはいけない一線を超えた日。


「 はっ、陽衣…すき、 」

『 きらい 』

「 寒くないか、陽衣。昨日は無理させてごめんな 」

『 …だいっきらいよ 』


あの日を今でも思い出すことがある、嫌でも耳に残る粘着質な音も熱っぽい吐息も与えられた快感も、全て覚えているのだ。そしてあの行為は彼の優しさであり愛情であり同情の行為ということも理解している。けれどどうしてシナ先生は彼を相手に選んだのだろう。もうあの時には既に毛嫌いしている時だったのに。同級生でもなく別の五年生でもなく六年生でもなく、何故久々知兵助だったのか。


「 この命果てるまで陽衣を守るから、約束 」

『 っ、彼奴の優しさも笑顔も想いも全部きらい 』


嫌いだと言っているのに涙は止まらない。わかっている、この言葉を口に出したら今までの私の苦労が水の泡になることを。けれど溢れ出した想いは瞳から零れる涙と同じで止まることを知らないのだ。


『 きらいなんて、嘘。本当は愛してるの、 』


でも言ってあげない、言わないから。
だから神様どうか彼を幸せにしてちょうだい。
これ以上冷えては心配をかけると思い部屋へ戻ろうとしたらそこには優しい笑顔があった。



20201104

題材曲:六花撫子(花園雪cv:今井麻美)
title…溺れる覚悟様

ifだけど色の事はセージ本編と繋がってます。
妹様の想いについてはどうなんでしょうか、ただifだからこういう想いもあってもいいのではって思って書きました。


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