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スカビオサ



※こちらはセージのifになりますが、キャラクターの落命描写があります。またこちらはifです! セージ本編では落命シーンは作りません。




私の人生は兄さんと伝ちゃんと忍で出来ている。兄さんは血が繋がっている本当の家族だが伝ちゃんは違った。私が五年 伝ちゃんが二年の後期に戦に巻き込まれ彼の身内が永逝してしまったのがきっかけで黒門伝七という少年は私、立花陽衣が身を預かることになった。家にも両親はいないが幸いにも兄さんが立派な忍で委員会の後輩でもあったことからこの事には賛同してくれていた。

それからは本当に幸せだったんだ。

長期休みは二人で家に戻り毎日一緒に勉強してご飯を食べて寝て。時々兄さんが帰ってきて伝ちゃんは勉強や忍術を教えてもらうの。
そんな二人にお茶を淹れたら「 ねぇ様 」ってかわいい笑顔を浮かべて嬉しそうに教えてもらった事を教えてくれる。

私たちは間違いなく家族だった。


『 ど…して… 』


忍術学園を卒業してから一年、伝ちゃんはもう四年生だ。
上級生になれば野外実習が増えてくるし優秀なあの子だからきっと忍務も沢山頂けるだろう。
これからのこの子の成長が私の楽しみだったのに、何故伝七は今私の腕の中で苦しそうに血を吐いているのだろう。


「 ね、さま 」


あの時より少し大きくなった手が私の忍服を弱々しく掴むので支えていない手でその手を優しく包んだ。
もう何も言わないで、最期くらい苦しまないで。


「 ぼくは、ねぇさまと、生きれて、 」


─────しあわせ、でした。


伝七はそれを最期に微笑むと静かに息を引き取った。
私がもっと早くに来ていれば、私がもっと早くに気づいていれば、こんなこと起きるはずがなかったのに。


「 陽衣 」


一刻程経ってからだろうか、背後から優しくそれでも何処か冷たい声で私の名を呼ぶ喜八郎がいた。けれど私は返事をすることはなかった。だって口を開けてしまえば零れるのはきっと恨み言や泣き言を言ってしまうから。
次に口を開くのは私の中でこの′断ができてからになるだろう。


「 陽衣、帰ろう 」


私は帰れないわ、喜八郎。
全てを終わらせるまでは帰れない。
そう意味を込めて首を横に振った。


もうこの子達を巻き込むわけにはいかない。
沢山楽しい思い出も幸せな思い出も出来たじゃないか、これ以上何を望のだ。
もしかしたら次は喜八郎や兵太夫、藤内に━━━━━兵助かもしれない。
これ以上目の前で彼等を亡くすのはもう、耐えられない。


『 お願い、喜八郎、殺して 』


伝七の死から数日後、一番信頼している男に殺してもらうことが私の答えだった。
もちろん目の前の男は唖然としている。
まさかこんなこと言われるなんて思っていなかったんだろう。


「 …嫌だって言ってもどうせ他の誰かに頼むか自害するんでしょ 」

『 そうね、そのつもり。でもどうせなら貴方に殺してもらいたい 』

「 ……悔しいなぁ…こんなことでしか陽衣を救えないなんて 」


そう言いながら苦無を片手に握る彼は私の知る中で二番目に優しい人。


『 ごめんね、 』


最後に視界に写った彼の瞳は涙を流しながら優しく小さく呟くのだ。


「 大好きな、陽衣のためだから、 」



20201028


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