ローズマリー
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別れとはいつかくるものだ。
そう思って自分は何事にも無関心でいるのが一番幸せだと思っていた。
『 ……やっぱり痛い 』
「 えっ、陽衣ちゃん大丈夫!? 」
『 平気 』
「 ど、どうしよう…今からでも町医者に行く? 」
『 話聞いて。私平気って言った 』
胸の痛みに耐えつついつものように勘右衛門を軽く殴った。
心配なんてかけるものか、私の為に貴方の歩みを止めないでくれ、お願いだから。
『 でも今日は寝る、おやすみ 』
「 あ、うん……
大丈夫かなぁ… 」
心臓が大きく脈を打ってる、全身が怠いし汗も止まらない。
せめて外まではもってくれと願うことしか今の自分には出来ないのが悔しい。
「 あれぇ? 陽衣ちゃんこんな時間からお出かけですかぁ? 」
『 はい、少し━━━━野暮用で 』
いつものように小松田さんに笑うことは出来ただろうか、すれ違ったくのたまにもいつもみたいに手を振れただろうか。
『 結核、ですか 』
「 はい。この症状だと恐らく 」
『 …そう…でしたか… 』
町医者に頭を下げ力無く道を歩く。
病院を出ると周りの景色が止まって色がないように見える、自身の心は死を宣告されたみたいな感覚で。
これはもう忍として生きれないということ。
それは即ち勘右衛門と隣を歩くことはできない。
あぁだから嫌だったんだ、人を好きになるなんて。
こうじゃなくても忍はいつ落命してもおかしくない職業なのに。
『 これからどうしようか 』
もう忍術学園には帰らない、いや帰れない。
元々感情が顔に出にくい方だから戻って辞めますって言えば済む話ではあるけれどそのタイミングで胸に痛みがきたら誤魔化せる自信はないから帰らない。
『 私は一人でも生きていける 』
歩くのもやっとな自身の脳裏には綺麗に笑う彼がいた。大丈夫よ、貴方には友人がいる。私には記憶の貴方がいる。だから大丈夫だ。
『 勘右衛門をお願い、鉢屋君 』
背後から着いてきていた勘右衛門と同じ委員会の男に振り返らず声を上げた。
「 戻らないつもりか 」
『 えぇ 』
「 ……勘右衛門はお前を心の底から愛していたよ 」
『 そんなこと 』
誰よりも知っているに決まってる。
20201027