セージ | ナノ

13



『 尾浜右衛門! 』

「 フルネームで呼ぶのはやめてよ、陽衣ちゃん 」

『 なによ、生意気。それより状況は? は組の子達は? 無事? 怪我してない? なにもされてない? 』

「 大丈夫、今頃わるーい人は中在家先輩と雷蔵にこらしめられてるんじゃないかな 」


息を切らさずに走ってきた彼女に伝えると、小さく『 そう 』と言って俺の隣に座ってきた。
こう改めて見ると女の子なんだな、と思う。
少し前まで自分より高かった身長は今じゃ俺の方が高いし、日に日に女の子らしくなっているというか。


『 …アンタは 』

「 え? 」

『 アンタは怪我してないのって聞いてるの 』

「 し、してないしてない! してたらもう俺帰ってるよ 」

『 ふぅーん… 』


聞いてきたのは陽衣ちゃん自身だが無事とわかると興味が無いかのように台の上に並べてある古書を手にとり読み始めた。
時々思うことがある、兵助は何故あんなにも彼女の事が好きなのか、って。
確かに自分も彼女の事は好きだと自覚しているけど理由は本当に一目惚れってやつなわけで。
兵助は最初こそ嫌がってた癖になんであんなに俺より好きになってるんだろう。


『 …なに。あんまり見ないで。ただえさえ五年生と仲良くしてるってだけで変な目で見られてるんだから 』

「 別にぃ。兵助はこの意地っ張りなお姫様のどこが好きなのかなって思って見てただけ 」

『 ……昔、一度だけ言われたわ。 顔って 』

「 ………は? 」


確かに顔は整ってると思うけれど。
いや兵助、苦し紛れの言い訳でもそれは無い。
そりゃ陽衣ちゃんも怒るに決まってる。
この子は顔で判断されるのが何よりも嫌いなんだから。


『 あら、誰か書庫から飛んでく 』

「 ニセ山左ヱ門さんっていうか、ドクアジロガサ忍者の人 」

『 誰でもいいけど。楽しそうね、アレ 』

「 ………やらないからね!? 」

『 別にアンタに頼まないわよ 』


それからというものとりあえず屋根の応急処置だけしてくると言った雷蔵を待つ為に店番をやっていたわけだが…


「 あら、貴女何歳なの? 」

『 十三です 』

「 まぁ~! それなら卒業したら是非うちの子とお見合いなんてどうかしら? 」

「 いやねぇ、うちの子の方が優秀よ? 」

「 あらやだ! お宅の子この前のテスト悲惨だったんでしょう? よかったらうちの子なんか…! 」


古書は売れていくが同時に陽衣ちゃんへの列も長くなっていく、主に女性の。
そりゃ容姿良し、作法良し、頭脳良し、誰がこんな優良物件をほっとくものか。


「 勘右衛門! 店番ありがとう…ってこの列は? 」

「 お疲れ。これは…陽衣ちゃんへの見合い申請列 」

《 助けなさいよ! 尾浜勘右衛門! 不破雷蔵! 》

「 いやぁ…本が売り切れたのにまだ列作るなんて…凄いねぇ… 」

《 アンタ達後で兄さんに報告するからね!? 》


図書委員会も悪くない、なんて思っていると立花先輩へ報告するという脅迫を受け助け出す雷蔵に思わず口角が上がった。
なんだ、あの時と変わらず話そうと思えば話せるじゃないか、みんな。


「 陽衣先輩、相変わらずモテますね… 」

「 お? 久作も陽衣ちゃんに恋焦がれてるのか~? 」

「 いや、左近が大変だなぁと思って 」


なんとか雷蔵がボロボロの彼女を救出すると正門から叫び声が聞こえた。


『 彦四郎!?!? 』

「 はっや 」




20201221



彦四郎かわいいからね、妹様モンペになるよ。
頼られたい学級委員長の段で可愛すぎて15回くらい見直したけど双子に「 それ伝七がいるからだろ 」って言われた、そうかもしれない。

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