09
-乱太郎side-
あの作法委員会での出来事から数日。あの日が嘘のように陽衣先輩は優しくて素敵な人だ。兵太夫や伝七は未だに私たちと先輩が話そうとすると蛇目のように鋭くなるけれどそもそも伝七はクラスが違うのに何故タイミングよく来るのだ。
「 そういえばみんなって立花陽衣先輩と話したことある? 」
「 あっ、それ俺も思った! 俺たち綾部先輩と田村先輩のガードが厳しくてさぁ…この間初めて話したんだぜ? 」
「 陽衣先輩? 庄左ヱ門程じゃないけど話したことあるよ 」
隣で授業の予習をしていた伊助が教科書から視線をこちらに向けて返事をくれた。今はい組に用事があり教室に居ない庄左ヱ門。伊助曰く彼は入学して早々陽衣先輩に会いに行ったらしい。一体どうやってあの先輩達のガードを避けたのだろうか。
「 僕がどうかした? 」
「 庄ちゃん! 陽衣先輩に勉強を教えてもらってるって本当!? 」
「 えっ、うん 」
言ってなかったっけ、と彼は呟いたがそんな話一度も聞いたことない。いや思い出して見れば確か何度か「 今日はねぇさんに勉強を教えてもらう日だから 」とか言って嬉しそうに勉強道具を持って部屋を出て行く姿を見た事あるようなないような。
「 あれぇ? 庄左ヱ門も陽衣先輩をねぇさん≠チて呼んでるの? 」
「 うん。兵太夫がそう呼んでるのに少し羨ましく思っちゃって 」
「 僕もおねぇちゃんって呼んでるよ! 」
しんベヱの問に柔らかく笑った庄左ヱ門の後に波に乗る様に伊助の後ろからぴょこっとニコニコな顔を出した三治郎もどうやら先輩の事を姉として慕っていておねぇちゃんと呼んでいるらしい。
「 兵太夫と一緒にいたら会えちゃったの。おねぇちゃんっておんぶしてくれるんだぁ 」
「 その状態で僕と三人で散歩してるよ 」
僅かに紅く染った頬を押さえてデレデレする三治郎はほっとこうと思い兵太夫を見るとなんとおんぶされた状態で散歩しているというではないか。愛嬌か、私達には愛嬌が足りないのか。
「 っていうか、僕達は組の大半は甘え隊に所属してるよね 」
「 甘え隊!? お菓子食べるの!? 」
「 違うよ、しんベヱ。僕達作法委員会が創った、おねーちゃんに甘やかしてもらう為の組織みたいな… 」
喜三太がお菓子を食べる事に勘違いしてるしんベヱに優しく正体を教えているのを聞いて唖然とした。聞くとこによるとは組は私達と伊助以外が甘え隊に所属しているらしい。金吾は半甘え隊という謎の立ち位置なのだが何故伊助は入っていないんだろうか。
「 委員会の先輩…久々知兵助先輩がちょっと可哀想だから…かなぁ 」
「 あー… 」
「 でもいつか先輩達が以前みたいに双忍に戻って仲良くなれば勿論入るし沢山甘える予定! 」
今でも十分甘えてるし!と伊助は笑った。
20201111
滝夜叉丸「 おい喜八郎、三木ヱ門。お前達なんで乱太郎ときり丸としんベヱを陽衣に会わせなかったんだ? 」
喜八郎「 理由なんて一つしかないよ、事前トラブル回避ってだけ 」
三木ヱ門「 陽衣が怪我でもしてみろ。喜八郎と立花先輩が般若の面を被るだろうが 」
滝夜叉丸「 (一番怒りそうなの三木ヱ門だろう) 」
喜八郎「 僕より三木ヱ門の方が怒りそうだけど 」
三木ヱ門「 寝言は寝てから言え 」
い組「 (お前がな) 」
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