セージ | ナノ

07



あの日、姉さんの涙は止まることを知らなかった。


『 兄さんに嫌われるなら死んだ方がマシだ! 』

「 陽衣、落ち着いて。 きっと先輩だって素で言ったわけじゃないよ 」

『 初めて言われた、嫌いって、私何もしてないのに…! きはちろ、どうしよう、私、私…っ! 』

「 陽衣 大丈夫だから、 」


綾部先輩に手を握られていても姉さんの瞳は揺れていて視点が定まっていない状態だった。
そんな状態から半刻経って泣き止んだ姉さんは戸部先生の様にゆらりと歩いて作法室出て行き追いかけようとしたけれど綾部先輩が「 ダメ 」って仰るから震える足は留まる。先輩は先程まで姉さんと繋がれてた手を見つめて小さく「 なんでこういう時にいないんだろう 」と呟いた。


その日を境に姉さんは作法室に来なくなり学園内で姿を見かける事も減っていった。


「 陽衣!? お前もう何日休んでないんだ!? 」

『 休暇なんて不必要 』

「 そうじゃないだろ!? 怪我だってしてるし一度休むべきだ! 」

『 無傷だ阿呆 』

「 嘘つけ! この馬鹿! これが全部相手の返り血だと言うのか!? そんなわけないだろう!? 現に所々傷があるじゃないか! 」

『 痛くないからこれは無傷 』

「 はぁ!? 」


門の前で先程帰ってきた田村先輩と言い合ってる姉さんを見た時は時間が止まったかと思った。
忍服はボロボロで苦無で斬られた跡や鉄砲玉を掠めた跡が痛々しく残っていて。


「 …目的は。何のためにお前は今自分を犠牲にしてまで攻め込む 」

『 ………兄さんに認めてもらうため 』

「 立花先輩はもうとっくに、 」

『 認めてない。私が弱く何の覇気も無いから偽物に気づけなかった、私が弱いから 』


いつ事情を聞いたのかは分からないが立花先輩が怒ってた理由も知りながら姉さんは鉢屋先輩のせいにすることはなく、自分が悪いのだ、と言い張る彼女に田村先輩は平手打ちをした。


「 馬鹿 」

『 … 』

「 先輩が認めなくても私達が認める。いいじゃないか、それで 」

『 でも、兄さん、 』

「 先輩には、ゆっくり認めてもらおう? 時間はまだあるのだから 」

『 ぁ…みき…ちゃ… 』


「 おかえり、馬鹿陽衣 」


あの日声を上げずに泣いたのが嘘のように田村先輩に抱きしめられながら子供のように泣きじゃくる姉さんの心の痛みが自分の心まで侵食した。



20201030

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