02
獣がいるかもしれない道を三人で駆けて行く。私は早く立花陽衣先輩に会ってみたくてそんな事を気にしてる状態じゃなかった。
だって善法寺伊作先輩は彼女のことを「優しくて強くて綺麗な人だよ」って褒めていたし三反田数馬先輩も「とても強くてやっぱ憧れちゃうよね」と言っていたし川西左近先輩も「えっと、柔らかくて温かい人」って言っていた。
「 おっと坊主共、待ちな 」
だから、早く会いたいのに、
「 捕まってしまうのが私達なのです 」
「 あ゛ーッ! 俺の小銭に触るんじゃねーッ! 」
「 あ~! 僕のお饅頭~! 」
縄抜け習ってないよーって思いつつ周りの様子を窺う。
きり丸は完全に怒ってるししんベヱも泣いているからまともに動けるのは私しかいない。
けれど刃物を持っている山賊相手に何も無い状態で立ち向かうなんて…私にはできない。
助けを待つにしてもその間に何処か別の所へ運ばれたら? もし身売りでもされたら?
「 そ、そんなの嫌だ…! 」
『 退け、通行の邪魔 』
涙目の目を開けると視界に写ったのはサラサラストレートヘアーの女性が山賊の顔を踏みつけているところで。
呆気にとられていると突然身体が浮き木の上へ移動させられた。
「 俺の小銭… 」
「 僕のお饅頭… 」
『 …そんなに大事なの、アレ 』
「 この二人にとっては…あはは… 」
『 ふぅーん…なら取り返してあげる 』
そう言った女性は一瞬で地に降りて山賊相手に汗一滴もかくことなく一人一人地面に転がしていくではないか。
あんな動きづらい着物でここまでできるなんて只者では無いのは確かだ。
『 はい、小銭とお饅頭 』
「 わぁ~! 僕のお饅頭! 」
「 俺の小銭ぃ~! 」
「 あ、あの、ありがとうございました! 」
『 別に。友達とお茶に行く途中の道だったから。相手待たせてるから行くね 』
とても強い女性はそのまま一瞬で見えなくなり絶対に普通の人ではないと思いながらも助けてもらえた恩を胸に再び学園への帰路についた。
「 あの滝夜叉丸先輩! 」
「 乱太郎、きり丸、しんベヱじゃないか。この平滝夜叉丸に何か用かね? 」
「 立花陽衣先輩って今何処にいますか? 」
「 彼奴は今日は週に一度の三木ヱ門との茶会に行っているぞ 」
「 えー今いないんスか… 」
「 お茶、会…? 」
そう言えばさっきの女性も友人とお茶に行くと言っていたけれど…まさか、ね?
「 ったく、遅いぞ! バカ陽衣! 」
『 一年が山賊に絡まれてたからしょうがないじゃん 』
「 な…陽衣怪我は? 大丈夫か? 」
『 山賊相手に怪我なんてしないしさせない、ほらそんな事より行くよ 』
TOP