保健室。
どこか魅惑的な雰囲気をもつその言葉。
「ひっ、え、ちょ!」
……どちらかといえば官能的という表現の方が正しかったかも。
先ほど軽い負傷をした私は、保健委員という誠実な人間に押し倒されていた。
一体どういうことなの。状況が全く分からない。この際誰でもいいから、詳しい解説をしてほしい。
「男と2人きり……どういう意味か分かります?」
「ごめんなさい本気で分からないです!!」
いつもよりも熱っぽく、艶やかなその声。そっと鼓膜を刺激する。
あ、ヤバイなこれ。
危機を感じながらも、なんとか抜け出そうと身をよじった。
「無理ですよ。力で敵うわけないじゃないですか」
「ですよねぇ!」
「ほら諦めてください。無防備に着いてきた先輩が悪いんですから」
「あれ、私の所為なの?」
おっかしいなぁ。罪をなすりつけられた気がする。
保健委員、兼、我が従順なる後輩。
小柄で可愛い奴と思っていたけれど、案外男だったらしい。
油断した私の負けか。
目次