欲しいのは、幸せだけの小さな世界。
「ねー、ちょっと聞いてよ。あの女、また付きまとってきたんだけど。ウザくない?」
「うっわ、最悪! ウザッ!」
ゲラゲラと下品な笑い声をあげ、私の隣を通過するクラスメイト。
はっきり言うと、一ミリも近づきたくない。
あんなのと1年間を過ごさなければいけないと思うと、じんましんが出そうだった。今更クラスメイトを返品することはできないから、もはや諦めの境地。
とりあえず息を止めてほしい。
あいつらと同じ空気を吸っていたくないの。
きっと、薄汚れているだろうから。
「どうしたの、キョーコちゃん」
「ううん、何でもない。心の中で毒を吐いてただけ」
「平常運転だね。これだから友達が増えないんだよ、キョーコちゃんは」
友人は困ったような笑みを浮かべる。
だって。普段は親友とか言ってるくせに、陰口ばっかりで。
もう、うんざり。
「信用できるのは、アンタしかいないから」
私の世界は、今日も閉ざされている。
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