この手で、守りたかった。
「う、ぐっ……ふ」
血を吐きながら、それでも立ち上がろうと力む彼女。
誰が見ても無謀。死の時を早めるだけだった。
「……ユーイ、もうやめろ」
俺の声は耳に入っていないらしい。
それとも、彼女の得意技“聞こえないフリ”なのだろうか。
どちらにせよ風前の灯である命。終わりが近い。
「行か、なきゃ……わた、し、が」
その身に致命傷を受けてもなお、生きようと必死に足掻いていた。
滑稽なようで、けれど彼女の真剣さには目を奪われる。何も言えなくなってしまう。
「国、守る、の……!」
彼女が口にした魂からの言葉に、思わず噛みついていた。
「違う! 裏切られたのはお前の方だよ、ユーイ!」
我が王に仕えるユーイ。国のために戦ってきた。
だが国の “秘密”を知ってしまった彼女は処分される。
差し向けられた刺客は、彼女の幼馴染である俺だった。
(本当はずっと、俺が守りたかったのに)
心に蓋をして。大好きな彼女に剣を――――。
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