パヒューム | ナノ
手紙が届いた。
届いた手紙は悟空が今まで受け取った手紙の中で一番手紙らしい手紙だった。
真白い長方形の封筒は一見無機質で冷たそうな雰囲気を醸し出しているのに、いざ手に取るとあっさりと拍子抜けするほどにさらりと柔らかく手に馴染んだ。
厚みはない。重くもない事から察するに中には紙しか入っていない。
日に翳してみる。幾分上等な紙で出来ているのだろう、中は見えなかった。
少しがっかりしたような気持ちで手紙を裏返してみた。
表も裏も間違いなく素っ気ない。
飾りどころか文字さえ書き込まれてはいない。
本当に自分宛ての手紙なんだろうな…。
メールやテレビ電話が当たり前に普及した便利社会にそもそもアナログな手紙を使う人なんてまだいたのだろうか。
悟空は独り暮らしだが、DM以外で手紙が届いた事など皆無だ。
よし。正体不明の手紙の中身を暴くべく、悟空は一つ息を吐いた。
一分の隙もなく完璧に糊付けされた境目から一気に指を入れる。
ビリ、と幾分堅い音がして、ついに手紙は開かれた。
白い封筒の中にはまた白い紙が1つ。
バースデーカードのような厚紙だった。
予想に反して何も書いてない。裏返したがそちらも同様に白紙だった。
なんだ。悟空は少し落胆した。宝の地図を見つけたのにもう取り上げられたような気分だった。
が。
「…?」
裏返した瞬間、鼻腔をくすぐる何かに気付いた。
それに鼻を押し付ける。疑問は確信へと変わった。
…彼だ。彼が好んで付けている香水の香りだ。
悟空はポケットからケータイを取り出し、急いで彼の番号を探す。
三蔵。
さっきまで全く思い浮かばなかったのに、今では何故直結しなかったか不思議な程だった。
ケータイの画面の呼び出し中の文字がじれったい。すぐに繋がることは殆ど無いのだが、やはり何か阻害されている気分になる。
1、2、3コール。出ない。
4コール目でゆったりとした声が聞こえた。
「…見たか」
苦笑した。およそ1ヶ月ぶりの電話なのに、開口一番それかよ。悟空は笑いをかみ殺す。
「うん。見た。つーか、」
「どうした」
「三蔵、会いたい。今すぐ抱きしめてほしい。」
「作戦成功だな」
普段より数倍機嫌が良さそうな三蔵の声に、悟空もつられて笑顔になった。


end
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