もう一度恋をする | ナノ
三蔵の顔が見れなくなったと猿が言った。
その言葉を耳にした瞬間俺はさっき食べた昼食が逆流してきそうな心地がした。

「悟空の様子が変なんです。」
自称保父は猿の変化にいち速く気付いた。
奴の洞察力には群を抜くものがある。特にこと、猿関連にしては驚異的と言っても過言ではない。
俺だって博打で食ってきた身、観察能力やああいう類いは人並み以上だと思っていたにも関わらずだ。俺は正直いつまでたっても八戒に勝てる気がしない。
「ん―、俺には普通に見えるけど」
「僕や貴方に対しては普通なんですけどね…主に三蔵に対しては、何かこう…」
「…こう?なに?」
「恋してる、というか。」

ぎく。流石鋭い。
魔王の目は節穴じゃねぇぜ猿。しっかりバレてる。

「あ―…でもそれ昔からじゃね?」
「いえ、昔は三蔵好き好きオーラが……失礼、口に出すとダメージ受けますねコレ。三好きオーラと略します。三好きオーラが悟空から滲み出てるというか垂れ流しというかそんな状態だったんですけど、今はなんだか…思春期の女の子が好きな先輩追いかけてる感じというか…」
「……うん。俺は八戒の今の言葉でダメージ受けてます」
「耐えてください悟浄。」
「ハイ」
「…何か心当たりはないですか?」

……キタ―…。
なんていうか俺は八戒には凄く弱い。
こんな感じで聞かれた日にはあることないことベラベラ話してしまうのが常だ。
ありますよありますよ心当たり。つい昨日同じ内容で悟空から暴露されましたよ三蔵のこと好きになりすぎちゃってまともに顔見られなくなってしまったと。…う、この言葉、口に出したら更にダメージ負いそうだ。

「猿はほら、三蔵とコレだろ?色々あるんだよ奴らにも。そこのとこは俺らが口出すとこじゃねぇだろ。」
「…そうですね。そうですよね。あの可愛くて健康的で純粋無垢な悟空が全く正反対の三蔵と恋人なんて、僕はあまり認めたくないんですが事実なんですよね。」
「しかもスルこと致してる」
「……倒れそうです悟浄。ユンケル買ってきてください。」
「仰せのままに」

丁度いい。
俺は素早くジープから飛び降りて近くの店に走った。
途中で渦中の三蔵に出会ったが思いっきり無視しといた。
三蔵は歯牙にもかけない様子でツンとしてやがったが、きっと悟空が挙動不審になったことをいぶかしんでイライラしているんだろう。
やってらんね―。
早いところ旅を終えて奴らと離れてゆっくりしなくては。
八戒を労うためにユンケルを3本、ついでにもう1本買って俺はそれを喉に流し込んだ。
冷たすぎて噎せた。






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